2021 Fiscal Year Research-status Report
ブランウェル・ブロンテと19世紀イギリスにおける海賊の表象
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21K00407
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
古野 百合 鈴鹿工業高等専門学校, 教養教育科, 講師 (50826344)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ブランウェル・ブロンテ作品研究 / マリア・ブランウェル / ブラックウッズ・エディンバラ・マガジン / 海賊表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、19世紀初頭のイギリスが抱える社会問題や植民地主義に対する高い関心と洞察力がブランウェル・ブロンテの作品に顕示されていることを論証し、「海賊の表象を通したイギリス帝国主義の風刺」を分析することであった。しかし歴史的側面のみならず、啓蒙思想や新古典主義への回帰が表出されていることが徐々に浮かび上がってきた。従って当初の年度別研究計画の順番を見直し、令和4年度に行う予定であった「母方の祖先に関する伝記的資料の分析」および令和5年度に行う予定であった「18世期海賊文学」を先に着手しつつ研究を行った。今年度の業績は以下のとおりである。 1)2021年はブロンテ夫人没後200年であったであったことから、4人の子どもたちを執筆活動へと誘う文学的土壌が、父親のみならず母親にもあった可能性を探るべく、「没後200年―マリア・ブランウェルに思いを馳せる」と題して研究発表、および論文投稿を行った。 2)ブロンテ家が購読していた雑誌「ブラックウッズ・エディンバラ・マガジン」の記事を分析し、ブランウェルの作品への影響を考察した。具体的には、ブランウェルが描いた地図に影響を与えたとされる雑誌記事とアフリカ地図を分析し、アフリカ地理とりわけニジェール川への関心が作品に表出されていることを明らかにした。この考察について「ブランウェル・ブロンテと地図の翻案ーブラックウッズ・エディンバラ・マガジンへの信用」と題する研究発表を行った。 3)2022年末共著にて出版予定の論文において、海賊表象の転換期に執筆されたブランウェルの「海賊」について分析し、密輸船の寄港でも知られるペンザンス出身の母親の文学的影響の断片と海賊表象について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの影響で海外での文献収集は出来なかったが、データベースを利用するなどして研究発表や論文投稿を行うことが出来た。また目標としていた国際学会での発表についても応募が受理されたことから、概ね計画通りに遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究において明らかになった、アフリカとりわけニジェール川に対するブランウェルの地理的好奇心が示すものについて、2022年7月にシドニーで開催される初期作品国際学会において口頭発表を行う予定である。また、ブランウェルが新古典主義や啓蒙思想に傾倒していた点も徐々に明らかになってきたので、古典文学への回帰が意味するものについても考察していく。
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