2021 Fiscal Year Research-status Report
ソ連時代末期ジャズ文化の資料学的研究--ジャズ・センターでの調査・研究を中心に
Project/Area Number |
21K00412
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 正美 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (10326621)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ロシア / ジャズ / 非公式芸術 / 現代詩 / 比較文学 / 芸術諸学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1970年代-1980年代のソ連においてジャズ、ロック、大衆歌謡、前衛芸術、非公式芸術がどのように生まれ、変化していったのかを明らかにすることにある。1970-1980年代のソ連では、後に「ソビエト・ジャズの黄金時代」と呼ばれるほど、さまざまなジャズが生まれ、発展し、前衛的な音楽家が地下で活躍した。ジャズに関わったのは音楽家だけではない。特に非公式芸術の詩人、作家、美術家、演劇人等さまざまな人物がジャンルの垣根を越えて交流し、協働し、多様な音楽や作品を創造し、人的ネットワークを築いた。しかし、このジャズ文化の全体像はいまだに明らかにされていない。本研究では1970年代-1980年代のソ連におけるジャズ文化に関係する資料の収集・調査はもちろんのこと、これらに関わった芸術家、音楽家、詩人などに現地で聞き取り調査をし、多角的なアプローチを行うことによって、ソ連時代末期の文化の多面的・複合的特質を解明する。 ヤロスラーヴリにあるジャズ・センター(所長:イーゴリ・ガヴリーロフ)が所蔵する音楽、音源、レコード、文献などの資料を詳細に調査し、ソ連時代末期のジャズ文化の進化と変容について考察するのが主目的だが、新型コロナ・ウィルスのまん延により、ロシアへの渡航が不可能なため、ロシアの研究協力者たちとのメールでのやり取りによる資料収集、zoomやskypeによるミーティング・聞き取り踏査によって研究を進めた。また、令和3年度に次の2回の公開研究会を行った。第1回研究会「ポスト・クリョーヒン・スタディーズ」(2021年9月19日、zoomで開催。報告者:鈴木正美、岡島豊樹)、第2回研究会「ポスト・クリョーヒン・スタディーズ」(2022年3月19日。zoomで開催。報告者:鈴木正美、岡島豊樹、土肥理香)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者である鈴木正美を研究の統括者として、①「1970年代-1980年代ソ連におけるジャズ文化の進化と変容」研究グループ(岡島豊樹、中野圭、セルゲイ・レートフ、キリル・モシュコウ)、②「非公式芸術との発達と他ジャンルとの融合」研究グループ(鈴木正美、ミハイル・スホーチン、リュドミーラ・ドミートリエヴァ)、③「人形劇と他ジャンルとの交流と協働」研究グループ(大井弘子、吉原深和子、ガルジェイ・サルトィコフ)が各々研究にあたった。新型コロナ・ウィルス感染が拡大する中、対面での研究は行わず、お互いにメールで連絡を取り合いながら、個別の研究を進めた。また、公開研究会もzoomにより2回開催した。 研究代表者の鈴木正美はセルゲイ・クリョーヒンの遺作『無言の証人』の翻訳を終え、2022年秋に出版を予定している。研究メンバーの岡島豊樹は『東欧ジャズ・レコード旅のしおり』(カンパニー社)を編纂し、2021年9月に出版した。 また、大井弘子の夫で、旧ソ連圏の人形劇の研究・紹介に尽力した故大井数雄氏の蔵書約4000冊が新潟大学アジア連携研究センター(旧環東アジア研究センター)に寄贈され、書誌データの入力・整理を進めている。これらの資料をもとに研究代表者の鈴木正美は日本ロシア文学会全国大会において研究発表「日本における大井数雄研究」を行った。 2020年1月に招へいした音楽家アレクセイ・クルグロフが日本で行った公演の音源がCD化され、"Alexey Kruglov ; Dromuse in Japan" (SoLyd Records, SLR0451/2/3)として、2021年6月にリリースされた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者である鈴木正美を研究の統括者として、①「1970年代-1980年代ソ連におけるジャズ文化の進化と変容」研究グループ(岡島豊樹、中野圭、セルゲイ・レートフ、キリル・モシュコウ)、②「非公式芸術との発達と他ジャンルとの融合」研究グループ(鈴木正美、ミハイル・スホーチン、リュドミーラ・ドミートリエヴァ)、③「人形劇と他ジャンルとの交流と協働」研究グループ(大井弘子、吉原深和子、ガルジェイ・サルトィコフ)が各々研究にあたる。新型コロナ・ウィルス感染の状況を見て対面による研究を検討するが、当面はお互いにメールで連絡を取り合いながら、個別の研究を進めていく。また、日ロの研究協力者との公開研究会もzoomにより2回開催する預定である。 ロシア軍のウクライナ侵攻により、ロシアへの渡航が難しくなったため、ヤロスラーヴリにあるジャズ・センターでの資料調査も断念せざるをえなくなった。ジャズ・センター所長イーゴリ・ガヴリーロフおよび海外の研究協力者たちとは当面の間、zoomやskypeによるミーティング・聞き取り踏査によって研究を進めていく。 2022年はロシアにジャズが誕生して100年目の記念すべき年であり、国内外でさまざまなイベント・学会が計画されている。ロシアの研究協力者のサポートによってこれらのイベント・学会にできるだけ参加し、研究ネットワークをさらに広げ、資料収集も精力的に行っていく。
|
Causes of Carryover |
少額のため、支出できなかったことによる。
|