2022 Fiscal Year Research-status Report
ラテン文学黄金期の予言詩人の社会的意義をめぐる研究
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21K00415
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河島 思朗 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80734805)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホメロス / オウィディウス / ウェルギリウス / 古代ローマ / 西洋古典学 / ラテン文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ラテン文学における詩人とその作品を再考し、「予言詩人」と呼ばれる特別な詩人の社会的な位置づけを解明することにある。とりわけラテン文学黄金期の詩人たちを考察の対象として、その作品を社会的文脈のなかに位置付けながら、詩人の文化的役割を明らかにすることを主眼とする。 本年度は、前年度の研究を引き継ぎながら、第一に叙事詩における文学解釈を深化するとともに、第二に古代ローマの文化的・社会的な側面の理解に力を注いだ。具体的には西洋古典文学を代表する叙事詩(ホメロス・ウェルギリウス・オウィディウスの作品など)を中心に、ギリシア文学からつづく叙事詩の伝統の継承と、ラテン文学の独自性を明らかにしようと試みた。その成果の一端を日本西洋古典学会(「叙事詩における夢見の描写」)で発表した。またホメロスの伝統を扱う書籍の書評を発表することに結びついた。また、詩人の社会的な位置づけを明らかにするために、古代における出版の状況や流通、文学サークルの状況など、多様な側面からローマの文化や社会の状況を考察するとともに、文学の社会への影響について分析の基礎づけをおこなった。ローマの文化・社会的な考察の成果の一端については、単著として刊行した。 本研究は学際的な性質を有するために、文学研究者のみならず、国内外の歴史学・宗教学・哲学などの研究者とともに研究会を開催し、意見交換を精力的におこなって有益な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究はおおむね順調に進展した。ただし新型コロナウィルスの影響のため、予定していた国外での資料収集や実地調査をおこなうことができなかった。国外での作業ができないことに代わって、翌年度予定していた文献学的な研究を先取りしておこなうこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は予定している通り本年度の研究をさらに進展させるとともに、成果の公表にも力を注ぐ予定である。また国際情勢が改善傾向にあるので、渡欧して研究をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度も引き続き新型コロナウィルス感染症の影響で予定していた国外への調査に行くことができなかったために、次年度の使用額が生じた。2023年度は通常の状況に戻りつつあるために、国外での調査に行く予定である。
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