2023 Fiscal Year Research-status Report
Pascal and Montaigne - Anthropology of "Pensees" and its origin
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21K00416
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山上 浩嗣 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (40313176)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 『パンセ』 / 『プロヴァンシアル』 / 『エセー』 / ニコル / 政治思想 / メメント・モリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる課題は、1)パスカルの人間学を、『パンセ』の草稿資料も用いて、彼自身のテクストに即して総合的に考究すること、2)パスカルの人間学の「起源」の局面を、とりわけモンテーニュからの影響を通じて検討すること、である。 2023年度は、1)に関連して、『パンセ』の独自訳を継続して進め、全体の約8割程度まで終えた。また、日仏のパスカル研究者で構成するグループ「Projet Pascal les Provinciales 2024」の研究会で、口頭発表 「La pensee politique dans la 14e Provinciale : entre Pascal et Nicole」を行った(オンライン)。2)に関連して、論文「パスカルとモンテーニュにおける政治と道徳ーー法の無根拠性、政治改革への嫌悪」を発表し(『人文学林』1号、査読あり)、「だらしなくふんわりと死ぬことーーモンテーニュの理想の死とパスカル 」と題する口頭発表(パスカル生誕400周年シンポジウム、日仏哲学会、大阪)を行った。年度中に行った一回の渡仏の旅費と滞在費の一部を本科研費から拠出した。 ほかに、翻訳2篇「ディドロ『サロン』抄訳(6)」(『大阪大学人文学研究科紀要』1号)、「ラファエル・ブラン『女性とリベルティナージュ:危険な関係?』」(『ガリア』63号)を雑誌に掲載した。また、「モンテーニュの理想の死とパスカルーーメメント・モリ、気晴らし、来世への希望 」と題する講演(2023年度 ラスタ教養大学 言葉文化コース)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的な課題は、主として次の2点である。1)パスカル人間学の文献学的研究および『パンセ』新訳。2)モンテーニュからパスカルへの影響関係の研究。1)については、翻訳を進め、フランス語での口頭発表を1回行った。2)については、論文を1本公刊し、パスカル生誕400年シンポジウムで口頭発表を行った。ほかに、私が主宰する「フランス近世の知脈」第10回の研究会を開催した(発表者5名)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も上記の二つの方向性に即して研究を推進していく。1)については、あと1年間で訳文を一通り仕上げ、再検証し、解説文などを執筆することで、拙訳『パンセ』をできるだけ近いうちに公刊したい。2)については、2024年度中に3つの論文を論文を学術研究誌に発表する予定である。また、望月ゆか氏(武蔵大学)、武田裕紀氏(追手門学院大学)との共編になるパスカルに関する一般書『パスカル読本』の刊行を鋭意準備中であり(2025年に刊行予定)、その原稿の検討会を兼ねた研究会の開催を予定している。さらに、2024年度中に、本研究に関連するいくつかの講演会に招待されている。作業量は膨大であり、いずれも周到な準備が必要であるが、ひとつひとつ丁寧に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
予定していたフランス出張の期間にちょうどリヨン第2大学から博士論文審査を依頼され、先方が航空運賃の約半額分を負担してくれたため、次年度使用額が生じた。この額は、フランスから研究者を一人招聘する際の旅費等の一部に使用する。
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