2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K00423
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
今村 武 東京理科大学, 教養教育研究院野田キャンパス教養部, 教授 (60385531)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 美学的共和主義 / チューリヒ / シェイクスピア / 自然概念 / ドイツ近代文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の基盤となる17世紀から18世紀への世紀転換期における美学的・文学理論上の変化を対象に研究を遂行した。具体的には、ボードマー及びブライティンガーの浩瀚な著作、及びドイツ語圏スイスおよびドイツにおける近代文学成立に深い影響を与えたイギリス美学と文芸理論におけるその変遷を、主に文献学的な手法によって包括的かつ網羅的に精査した。 本研究は3つの関連領域から構成されるが、第1段階を構成する本年度の研究内容にそくして、近代ドイツ文学揺籃期の成立状況に対し新たなアプローチを行う意義を説明するための鍵となる「自然概念」の成立と伝播、チューリヒという伝統と革新が混在する閉鎖的な空間における、いわゆる突発的な芸術革新を生み出す土壌の指摘、さらにイギリスにおけるシェイクスピアの受容史とドイツ側におけるそれとの比較対応に関する基盤的研究を遂行した。 本年度の研究成果の一端は、すでに年度中に学会発表及び論考の形式で発表を行った。とりわけ、18世紀後半のシェイクスピア受容とドイツ語による受容の基盤が、ヴィーラントによって据えられたことを改めて確認し、その取り組みがスイス・チューリヒのボードマー邸から開始された当時の輪郭、ドイツ語圏最初期のシェイクスピア移入がその死後100年以上を経てからアディソンやドライデンら英国の評論家を経由して行われ、ボードマーとヴィーラントのシェイクスピア理解の基本線を形成したこと、ヴィーラントが『テンペスト』を最初の翻訳・上演作品に選んだ理由はおそらく、作品のストーリーと場面設定の独自性にあることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の出発点かつ基盤ともなる17世紀から18世紀にかけての転換期における美学的・文芸理論上の変化は、定期刊行誌に掲載された論考をも含めた当時の広範な著作を対象に研究を遂行する必要がある。さらに、近年刊行を開始したヴィーラントの批判的校訂版を入手することができ、安定的に研究を遂行することができた。 イギリスの文芸理論の展開に関する研究では、予想以上の知見をうることができた。しかしまた、その成果を、ドイツ語圏スイスにおけるボードマー及びブライティンガーの浩瀚な著作に反映されたドイツ近代文学成立への胎動と関連して研究するためには、一層の比較文学的・文化史的・演劇史的考察が必要になった。 新たな知見は、逐次学会発表を行うことで、進捗情況の可視化を目指した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、さらに必要となる1次文献の収集と分析が中心となる。しかしまた、その成果を新たに得られた文化史的・文学史的・演劇史的・美学的な知見と構想から、新たな解釈を提示することが肝要である。今後の研究推進方策としては、学会発表のみならず、より小回りのきく研究会等においても逐次発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今般の状況により旅費の支出が行われなかったものの、第1次資料の収集に注力して、文献学的研究に努めたため。
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Research Products
(2 results)