2021 Fiscal Year Research-status Report
十九世紀フランスにおける汎神論論争に関する研究―文学・哲学・宗教学
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21K00426
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
山崎 敦 中京大学, 教養教育研究院, 教授 (70510791)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 汎神論 / 美学 / 自然神学 / クーザン |
Outline of Annual Research Achievements |
感染症による渡航制限のため、予定していたフランスでの文献収集・調査を断念せざるを得なかった。また参加予定の2件のシンポジウムも相次いで延期された。とはいえ研究対象である十九世紀の哲学・宗教・文学に関する文献精読の作業は進み、その成果を仏語論文2点と邦語論文1点にまとめ公表することができた。文献精読および論文執筆の過程で、フランス十九世紀前半におけるカントやシェリングやヘーゲルをはじめとするドイツ観念論の受容が、汎神論論争に色濃く反映している点がいっそう明らかになった。フランスの汎神論論争を正確に跡づけるためには、「十九世紀フランスにおけるドイツ観念論受容」という大問題を避けて通れないことが明らかになったともいえる。この観点から、ドイツ観念論受容において決定的な役割を果たしたクーザンの王政復古期の講義に着目した。とりわけ後に『真・美・善』のタイトルで公刊される1818年講義を精読し、クーザンがドイツ観念論から何を継承し、何を改変したのか、その受容の分析に着手した。『真・美・善』で展開されるクーザン美学におけるカント『判断力批判』の影響は、クーザン美学だけでなく、ロマン主義美学全体を考察する上でも重要である。美学は伝統的に、自然神学と密接に結びついているが、同時に自然神学は汎神論の母体でもあるから、フランスの美学を考察することは、そのままフランスの汎神論を考察することになる。この見通しのもと、先行研究の収集・読解に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外出張こそ中止や延期を余儀なくされたが、これまでに収集した文献の読みこみは、当初予定したとおりに進み、またその成果を遅滞なく発表もできたから、研究の進捗具合は順調であろうと、ひとまず評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果を発表するためには、発表の「場」が必要であるから、今後はより積極的に「発表の場」を求めていきたい。
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Causes of Carryover |
主たる理由としては、感染症による渡航・移動制限のため旅費を支出できなかったため。次年度は、制限が緩和された場合には、旅費を支出する予定である。
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