2023 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Italian War POW "Concentration Camp Literature": Toward the Construction of "World History of POWs"
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21K00428
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土肥 秀行 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40334271)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 収容所文学 / トラウマ文学 / 捕虜の世界史 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、捕囚というスタティックな状態を考える際に有効な真逆のケース、「移民」について、イタリア南部シチリアの例をピランデッロ文学とタヴィアーニ兄弟の映画を通して語ることからはじまった。移動のテーマは、9月のフィレンツェ大での「巡礼」をめぐる共催シンポにも続き、フィレンツェで出版されてから140年が経過した『ピノッキオ』が、日本では移民大国である紀伊の新宮の文人サークル(佐藤春夫中心、含アナーキスト)において日本ではじめて訳された(1918~20年)ことを報告した。また、一次大戦時の日本での捕囚者に多かったトリエステ出身者の、同時代・同郷人としてのイタロ・ズヴェーヴォの作である『ゼーノの意識』について論じることは、自分にとって必然であった。2023年11月のシエナ外国人大学での『ゼーノの意識』出版100年シンポに参加し、精神分析のような最新流行を取り入れる辺境文学(収容所文学とも近接)を深く知れた。やはり20世紀初頭の文学・芸術のモダニティ/新傾向の再検討のために、未来派の宣言文をテクスト分析を試み、論文として発表した(「未来派の女性論を読む」)。初年度には、イタリアの「戦争文学」との問いに、収容所を切り口として自分なりの答えが返せるようになった。イタリアにとって戦争(一次大戦)は、近代国家への飛躍であると同時に、深刻かつ幅広い収容状態により、停滞を余儀なくするものであった。それが作家や芸術家に与えた影響は、トラウマと呼べるものであった。二年目は、そうした収容所での作家がクリエイティブであろうとする苦悩の足跡であるメモと習作群を、個別のガッダの例に検討したが、経験というよりも文学自体が妄執と化していく様が確認できている。三年目は、移動との対比で収容経験を語る可能性を追求できた。年ごとの異なるアプローチが、「収容所文学」なる新たなジャンルの仮定に、結果的に示唆的であった。
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Research Products
(7 results)