2021 Fiscal Year Research-status Report
世紀転換期プラハのドイツ語文学における認識論と言語思想―フランツ・カフカを例に
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21K00430
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 嘉彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (50079109)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラハ / カフカ / マルティ / 言語哲学 / マイリンク / 心霊思想 / 超心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)プラハ大学で編集刊行されているドイツ語の紀要にドイツ語論文を投稿し、査読を経て掲載された。これは、フランツ・カフカがプラハ大学で教えをうけたブレンターノ学派の言語哲学者アントン・マルティの影響を、その初期作品のなかに看取し、分析したものである。 2)さらに先年にプラハでおこなわれたドイツ語のシンポジウムを記録した論集(2021年12月刊)にも、グスタフ・マイリンクにおける心霊思想と超心理学の影響を扱った論文を寄稿したが、これもおなじプラハのドイツ語文学につらなる主題であるという意味では、本研究課題の展開に資するものである。 3)また国内にあっても、Zoom によるシンポジウムに参加して、パネラーとして、ドイツにおける心霊思想ないし超心理学に関する招待講演をおこなったが、これは本研究課題に直接には関連しないものの、広義における同時代の認識論的なスキームに属している。このシンポジウム記録は、2022年度中に雑誌に公表される予定である。 すなわち、いずれの業績も、19世紀後半から1930年ごろにいたるまでの、いわゆる「世紀末」をその核とするヨーロッパ近代思想の変動期にあって、認識論および広義の「心理学」に包摂される知的集積を研究対象にして、その理念史的布置を明らかならしめようとするものである。下記に指摘したように、研究を遂行するにあたって支障となる外的な要因によって、その進捗がやや遅れてはいるものの、まずは着実な成果をあげているといえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍がなお終息せず、外国出張、外国人研究者との意見交換、ドイツないしオーストリアの大学および公立図書館での文献調査が思うにまかせないことが、その理由の第一にあげられる。外国人研究者とは、メールでの意見交換をおこなっているが、それでは十分な成果をあげることはむつかしい。くわえて、ドイツ語の研究文献を購入するにあたっても、ウクライナ情勢の影響で、ドイツ、オーストリアからの航空郵便に支障が生じて、到着が遅延するといった事情もある。
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Strategy for Future Research Activity |
外国出張によって、外国人研究者との意見交換、ドイツ、オーストリアの大学および公立図書館での文献調査をおこなえるものと期待しているものの、これは、畢竟、外的な要因によって左右されるがゆえに、現時点では明確な計画として立案することができない。研究者とのメール交換、Zoom の使用等によって代替するにも限界がある。とりあえずは、国内の大学図書館に所蔵されている図書を貸借し、またすでに収集した文献を精読することによって、研究をすすめるほかはない状況である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、外国出張を断念せざるをえなかったため、およそ1ヵ月、ドイツに研究滞在する旅費相当分を、未使用のままにせざるをえなかった。また外国の出版社に発注した図書の到着が、ウクライナ情勢の影響で遅延したことも、その理由のひとつである。外国出張に関しては、状況が許せば、2022年度におこないたいと考えている。
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Research Products
(3 results)