2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Sillius Italicus' Punica
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21K00434
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 宏幸 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (30188049)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シーリウス・イタリクス / 『プーニカ』 / ラテン文学 / 歴史叙事詩 |
Outline of Annual Research Achievements |
学術論文(1):「シーリウス・イタリクス『プーニカ』15.1, 17.1の提示」昨年度実績報告書に記載した口頭発表を文章化したのもので、内容は当該報告書にすでに記した。 学術論文(2):高橋宏幸・大芝芳弘「対論「アエネーアースの語り」」『プーニカ』が作品構想を引き継ぐ『アエネーイス』における主人公の語りの意味について検討した。 口頭発表(1):「元老院のcura とスキーピオーのcura:シーリウス・イタリクス『プーニカ』第15歌から結末への展開」上記学術論文(1)のうち、とくに第15歌1行に見られる提示から作品の結末に向けての展開をあらためて検討した。 口頭発表(2):Hiroyuki Takahashi, Translating the Metamorphoses into Japanese. オウィディウス『変身物語』について、ペンギン叢書の英語翻訳者、二人の中国語翻訳者とともに、当該作品の翻訳に関わる諸問題についてパネル発表を行ない、その後の質疑、全体討議に参加した。『プーニカ』が踏まえる主要な先行作品の一つである『変身物語』をめぐって、研究課題と共通する原典邦訳の問題について検討した。 図書:高橋宏幸訳『シーリウス・イタリクス『ポエニー戦争の歌』1 』『プーニカ』の邦題を『ポエニー戦争の歌』として全17歌のうち第8歌までの邦訳を収める第1分冊を刊行した。本邦初訳として作品理解に資する平易な訳文を提供するとともに、詩作にあたって踏まえられているリーウィウス、ポリュビオスなどの歴史書の記述、ウェルギリウス『アエネーイス』および『農耕詩』、オウィディウス『祭暦』および『変身物語』、ホメーロス『イーリアス』および『オデュッセイア』などの詩作品の表現について詳細な註を付す一方、解説には、作者とその時代、作品の背景、叙述の特色などを記述した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、シーリウス・イタリクスの歴史叙事詩『プーニカ(Punica)』全17歌について、叙事詩の伝統との関係、歴史著作との関連、詩人の生きた時代といった作品の置かれた「文脈」の検討を通して文学表現の特色をさぐり、そこから、作品の独創性と卓越性、および、西洋古典文学の伝統におけるこの叙事詩の位置づけを明らかにすることを目的として出発し、(1)基本データの確認整理として、(1.1)本文批判上のデータ確認と整理、(1.2)本邦初訳となる作品の邦訳作業、(1.3)作品の特徴的文体の用例の収集とそれらの効果についての検討、(1.4)詩句のレベルでモデルとなった先行作品との比較を行ないつつ、(2)作品の「文脈」をめぐって、(2.1)神話的枠組みと叙事詩の諸技法という二つの観点から叙事詩の伝統との関係、(2.2)題材としての歴史著作の取り込み、(2.3)フラーウィウス朝期叙事詩としての位置づけについて検討したうえで、(3)作品全体を俯瞰する解釈を目指す。 研究第2年度である2022年度は上記の(1)全般、(2.1)、(2.2)に大きな進展があり、(3)についても解釈のいくつかの観点に関して見通しを得た。 (1.2)邦訳作業は終了し、「研究実績の概要」の項に記したとおり、『ポエニー戦争の歌』の題名のもとに京都大学学術出版会西洋古典叢書として全2冊のうち第1分冊を2022年度内に刊行できた。第2分冊も2023年度に刊行予定である。邦訳は必然的に(1.1)本文批判の作業をともない、(1.4)と(2.2)に関しても註において詩作品および歴史著作の関連個所を詳細に記述した。 学術論文は(1.3)、(1.4)の作業のうえに(2.1)の検討を行なった成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
邦訳作業と学術論文等の発表を通じて、歴史的題材と文学的モデルの両方で重要と思われる観点が浮かび上がってきた。 その一つは、いわゆる縁起譚に関わる。作品の舞台が地中海全域にわたり、しばしば過去に遡っての語りも挿入されることから、言及される地名や人名も多数にのぼり、それらにまつわる縁起譚も相当数に及ぶ。ところが、これらの縁起譚には他に典拠がない場合、あってもシーリウス・イタリクスより後の時代のものしかない場合が多く、そうした場合、詩人の創作である可能性が高い。そこに一定の物語パターンが認められれば、創作か否かについて判断基準を提起することができるとともに、詩作手法についても理解を深められると考えられるので、この方向での検討を進める。 いま一つは、ウェルギリウス『アエネーイス』との関係で、とくに主要登場人物とのパラレルについてである。すでに発表論文において、ハンニバルにアエネーアースとその宿敵トゥルヌスと両方が重ね合わされ、それが物語展開に陰影を深めていることを見たが、大スキーピオーにもアエネーアースとともにトゥルヌスを想起させる詩句が用いられている場合がある。当該詩句をめぐり、その類例詩句とそれぞれの文脈を比較検討することが有益であると思われるので、この方向での考察を進める。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き感染症拡大を考慮して予定していた旅費および人件費・謝金の使用を控えたため、若干の残額を生じた。その分を次年度に持ち越して使用する。
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Research Products
(6 results)