2022 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ啓蒙主義詩学史の再記述-模倣・想像・情念の複合性をめぐる概念史として
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21K00435
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福田 覚 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 教授 (40252407)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 文学論争 / 詩学史 / ドイツ啓蒙主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
資料収集は、依然として続くコロナ禍に加え、研究者の健康面での不調のために、前年度の遅れを取り戻すかたちにはならなかった。 理論面の考察では、手順として、ゴットシェートとスイス派の間の文学論争を引き続き具体的な土台とした。それについて論じる途上で「真実らしさ」と「不思議なもの」という詩学的概念の連関を見極める必要があり、その方向に向かうために、文学論争に入った時期のゴットシェートとブライティンガーの詩学書を取り上げ、個別的な論争点から、その背後にある詩学的立場の違いを見ていくかたちで論を進めた。(この議論については、次号の『ドイツ啓蒙主義研究』に論文を発表予定。) 両概念への重みの置き方の違いがライプツィヒとチューリッヒとの間にあると見ることができたが、本研究課題において、その両概念を組み入れた個々の詩学の理論構成から、想像力概念の複合性を考えるという流れを想定している点については、ブライティンガーが「詩的絵画」に求めているものの変化を吟味することが一つヒントになると考えられてきている。文学論争は1740年代の状況を浮かび上がらせるので、詩学史の検討のためには、とりわけスイス派後期の初期との違いを見る必要がある。この点では、可能世界論の導入、模倣概念の明示されない語義の変化といったところが問題になると思われた。ゴットシェートの詩学に関しては、崇高概念の系譜との交点が見えづらい。当時、崇高概念はバロック批判にも用いられたが、ゴットシェートとスイス派では、バロック批判の論理構造が異なるように思われた 自然学と宗教学の思考法の対比という面では、文学論争のなかでも、詩論の論述において理性が宗教を吟味することを認めるかどうかという論争点が確認できた。そうしたところから、学問分化の進行の様子を見て取っていくことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎的な資料整備の面では、やはり渡独しての文献調査ができなかったため、遅れがある。2023年度から渡独を再開する予定でいる。 理論的探究の面は、大枠のところでは研究計画の見直しの必要はなく、その意味では順調だが、研究期間の折り返しを見据えて、詩学的概念の系譜的探究に加えて、複数の詩学的概念をめぐる言説間の関係も徐々に考察の範囲に含めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
渡独しての資料収集ができなかった部分は、渡独を再開する予定で考えている。 理論面の考察の手順としては、「真実らしさ」、「不思議なもの」、「崇高」、「模倣」といった詩学的概念の系譜的探究に加えて、研究期間の折り返しを見据えて、情念論、想像力論、模倣説といった言説間の関係も徐々に考察の範囲に含めていく。
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Causes of Carryover |
科研費の申請時には渡独しての資料収集を毎年予定していたが、2022年度もコロナ禍等のためその出張が見送られたことにより、大きな次年度使用額が生じることとなった。2023年度から渡独を再開する予定で考えている。
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