2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K00441
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
伊藤 白 学習院大学, 文学部, 准教授 (50761574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 隆 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10456808)
高橋 知子 (渡會知子) 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 准教授 (10588859)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナチス / 図書館閲覧禁止リスト / 文芸公共圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
図書館という装置の「文芸公共圏」への影響を分析するため、ナチス時代の禁書リストの分析作業を進める一方、公共圏の構造や機能についての研究会を定期的に開催している。 2021年度は、研究の土台となるナチス時代の図書館閲覧禁止リストをデータ化し、分析する作業に着手した。ナチス時代の図書館閲覧禁止リストとしては、ベルリンの図書館員ヴォルフガング・ヘルマンが1933年に作成したいわゆる焚書のための「ブラックリスト」(文学作品部門)と、当時大きな影響力を持ったと考えられる、国民啓蒙・宣伝省によって作成された1938年の『有害著作物』リストの2つを対象とした。後者は181ページにわたる分野横断的な長大なリストであるが、そのうち単独の著作物ではなく全作品が禁書となっている文学作家に限定し、その属性を分類している。当初想定していたとおり、亡命作家、ユダヤ人作家、共産主義作家、反戦思想の作家等がリストに挙がっているが、そうした分類に含まれることが想定される作家で名前がない作家も少なくない。リストへの掲載の有無が実際の図書館での扱いにどう影響したのかについても調査を行う必要があることが見えてきた。こうした調査・分析を経て、現在、19世紀中盤から20世紀前半までの各種図書館の目録や利用状況を、日本国内から可能な範囲でリモートで調査し、ナチスの禁書リストと照合する作業を進めている。 研究会では、女性や民族的マイノリティが作る対抗公共圏のあり方について、ドイツ文学の特定の作家の文学活動に関連づけながら分析した。また、社会の中で特定の図書が「有害」と解釈されるメカニズムを理解するうえで前提となる、コミュニケーション・システムの理論についての考察を深めた。 研究代表者・研究分担者の2021年度の業績には、上述の過程で得られた知見が反映されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大により十分な活動ができないままに2021年度が終わり、研究状況にはやや遅れが生じている。特に、対面での研究会が実施できなかったため、共同での分析作業に制約が生じたこと、また作業を依頼する予定だったドイツ在住の研究協力者が、2021年度後半オミクロン株流行の影響で図書館を利用できず、調査・作業が不可能な状況にあったことで、予定していた作業がいくつか今年度にずれ込んでいる。 ただし、その分理論面での作業を前倒し、研究分担者及び2020年度までの学内の共同研究プロジェクトの参加者とズームでの研究会を開き、文芸公共圏についての分野を超えたディスカッションを行った。そうした理論を前提に、禁書リストの分析・分類を現在着実に進めている。 また、2010年代のシリアからの移民・難民の流入や新型コロナウィルス感染拡大による社会的状況の変化、さらには2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻などを経て、ドイツの世論には変化が生じていると考えられる。そうした状況の文芸公共圏への影響を俯瞰的に把握すべく、ドイツ・ギーセン大学の研究所とコンタクトを取り始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は引き続き、研究分担者の協力を得つつ、ナチス時代の禁書リストの分析及び19世紀から現在までのドイツの図書館の蔵書との照合を進める予定である。 また、2022年度は夏にベルリン、フランクフルト、ギーセンへの出張を予定している。そこで図書館での現地調査を行うほか、在ドイツ研究協力者から調査結果の報告を受ける予定である、また、ギーセン大学のホロコースト関連文学の専門家であるフォイヒェルト教授と面会し、ドイツの現在の文芸公共圏について意見交換を行うことを予定している。本来、2022年度はグローセンハインやハンブルクでの調査を考えていたが、ギーセン大学との協力関係が構築されつつあることに鑑み、順序を変更することとした。 また、膨大なリストのうち、個別の著作について現在手を付けることができていない。これについては、言語学の知見を利用することを2020年度までの学内の共同研究プロジェクトの参加者から提案されており、具体的な分析方法を現在検討中である。
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Causes of Carryover |
オミクロン株流行の影響で、在ドイツの研究協力者が図書館での現地調査が行えなかったため。昨年度できなかった作業を2022年度に行う予定。
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[Book] 変身2022
Author(s)
フランツ・カフカ(川島隆訳)
Total Pages
176
Publisher
KADOKAWA
ISBN
978-4041092361
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