2021 Fiscal Year Research-status Report
Anglo-Japanese Encounters and Exchanges in Modern Maritime Culture
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21K00455
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 順光 大阪大学, 人文学研究科, 教授 (80334613)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トマス・キャンベル / エドゥアール・ドゥタイユ / 露営の夢 / 小早川秋聲 / ウィリアム・ダンピア / ウィリアム・ロビンソン / ジャポニスム / オリエンタリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の関連する3つの主題について7件の口頭発表を行い、3本の論文と3本のコラムを執筆した。 英国の海洋文化をめぐる東西交流。英国中心の通商航路網の拡大と日本の編入について、温室でバナナの栽培に成功し、水晶宮を設計したパクストンに注目することで、日本を蚕になぞらえた鴎外の「黄禍」の詩が「バナナ共和国」批判と読める可能性を指摘した。『中国文学をつまみ食い』(2022)を寄稿し、英語圏で紹介された鄭一嫂が東洋の女性海賊の原型となった経緯などを紹介した。また17世紀のダンピアの航海記について、小川芳男の和訳(1943)が、英国を海賊国家と批判する大川周明『米英東亜侵略史』の小川による英訳(1944)と連続していることを指摘した。 オリエンタリズムを背景にした文化交流と日本。呉道玄が玄宗帝の前で注文された絵の中に入り込み、そのまま消えてしまう逸話は、アンダーソンが『日本絵画芸術』(1886)で橘守国の『絵本通宝志』(1729)から引用し、さらにジャイルズが『中国絵画史』(1905)で紹介して広まった可能性が高いことを前掲書の別のコラムで指摘した。またラクイラ大学の共同研究に参加し、17世紀オランダで記された鼠責めが中国の拷問としてオーウェルや南條範夫に描かれた経緯を発掘することができた。英語圏での神智学の流行により、岡倉覚三によって三酸図が万教帰一的な逸話として紹介された可能性や、明治期に盛んに描かれた水彩画が英国でのワイルド・ガーデンの隆盛と関連している文脈も明らかにできた。 英国の海外展開とその日本での転用。1921年の皇太子裕仁親王の欧州訪問が、英国の海運海軍を規範とした近代日本にとって一つの集大成になっていることを指摘した。関連してキャンベルの詩「兵士の夢」やドゥタイユの《夢》に由来する夢見る兵士の表象が、靖国神社に代表される英霊との再会へと編成された可能性を指摘できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍が予想以上に長引き、予算の点でも計画通りに海外の文書館などで調査を行えなかったものの、調査を一部変更して行い、補助として関連資料を追加購入することで、ほぼ予定通りの分量の英語・日本語での口頭発表および論文を成果として出せたので。
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Strategy for Future Research Activity |
状況に応じて内外で可能な限りの調査を行い、それらの調査に応じて、書籍ほか資料を購入する。それらをふまえながら、日本語及び英語での論文執筆と口頭発表を準備する。
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Causes of Carryover |
近距離の公立図書館への出張で全額を使用する予定であったが、閲覧予定の図書が貸出中であったため、次年度使用額が生じた。次年度に再調整し、利用が可能な際に出張を計画している。
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Research Products
(13 results)