2021 Fiscal Year Research-status Report
古代エジプト神官文字写本の地域差を含めた言語記述とⅢF検索プラットフォームの構築
Project/Area Number |
21K00472
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 正勝 東京大学, 附属図書館, 特任准教授 (70578369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 覚 東京大学, 史料編纂所, 助教 (80802743)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 記述言語学 / 古代エジプト語 / 方言 / 文字 / 表記 / ヒエラティック / デジタル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一に、古代エジプト語の神官文字写本を対象とした言語記述の実践を行うことにある。対象資料は第19-20王朝時代の書簡とする。具体的にはエジプト北部の新都ペルラメセスで執筆された書簡9通とエジプト南部の古都テーベで執筆された書簡7通を対象とし、文字、形態素・語、構文について地域差含めた言語記述を行う。第二に、①言語記述の結果、②神官文字のIIIF画像、③開発済みの神官文字字形データベース、の3点をシームレスに統合させた検索システムを開発する。代表者は言語学の立場から言語記述を、分担者は情報学の立場からシステム構築を行い、双方の分野での研究の進展を目指す。本研究課題は、オープンデータ(原資料の画像公開)、オープンメタデータ(言語記述の成果の公開)、オープンツール(検索システムの公開)を兼ね備えた検索プラットフォームの構築を目指すものである。言語記述班は北部地方の書簡9通(ライデン国立古代博物館所蔵 Leiden I 360~368)のそれぞれについて、まずは文法記述を実施した。書簡ごとの際については、現在、検討中である。システム構築班は、本研究の課題としている「言語記述の成果(アノテーション)」と「資料のIIIF形式画像(データ)」を用いたIIIF検索プラットフォームの構築に向けて、アノテーションに対する検索を可能にするIIIF Content Search APIを用いたプロトタイプ開発を行なった。具体的には、国立国会図書館が公開するIIIF画像とOCRテキストデータを利用した、全文検索アプリケーションを開発した。今後は、言語記述の成果を原資料のIIIF画像に連携させるプラットフォームを構築させるともに、申請代表者と分担者らが開発した「『ヒエラティック古書体学』データベース」をプラットフォームにリンクさせる作業を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、第一に、古代エジプト語の神官文字写本を対象とした言語記述の実践を行うことにある。対象資料は第19-20王朝時代の書簡とする。具体的にはエジプト北部の新都ペルラメセスで執筆された書簡9通とエジプト南部の古都テーベで執筆された書簡7通を対象とし、文字、形態素・語、構文について地域差含めた言語記述を行う。第二に、①言語記述の結果、②神官文字のIIIF画像、③開発済みの神官文字字形データベース、の3点をシームレスに統合させた検索システムを開発する。代表者は言語学の立場から言語記述を、分担者は情報学の立場からシステム構築を行い、双方の分野での研究の進展を目指す。本研究課題は、オープンデータ(原資料の画像公開)、オープンメタデータ(言語記述の成果の公開)、オープンツール(検索システムの公開)を兼ね備えた検索プラットフォームの構築を目指すものである。今年度、言語記述班は北部地方の書簡9通のそれぞれについて、まずは文法記述を実施した。これについては予定通りであるが、9通の書簡の異同分析には至らなかった。また、システム構築班は、本研究の課題としている「言語記述の成果(アノテーション)」と「資料のIIIF形式画像(データ)」を用いたIIIF検索プラットフォームの構築に向けて、アノテーションに対する検索を可能にするIIIF Content Search APIを用いたプロトタイプ開発を行なった。具体的には、国立国会図書館が公開するIIIF画像とOCRテキストデータを利用した、全文検索アプリケーションを開発した。これについては予定よりも早く研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度(2年目) 言語記述班は南部地方の書簡7通(ライデン国立古代博物館所蔵 Leiden I 369~1971, トリノ・エジプト博物館所蔵 Turin 1975, 大英博物館所蔵 BM 10375, BM 10284, BM 10100)について文法記述を実施するとともに地域差に関する分析を行う。また、すべての書簡を読み終えたタイミングで博物館に赴き、資料の実見を行い、写真ではわからない箇所の解読を行う予定であるが、渡航が許されない場合には、現地調査を3年目に繰り越すことにする。加えて、言語記述の結果を踏まえ、北部と南部の地域差について、詳細な分析を行う予定である。システム構築班は今年度開発したプロトタイプシステムについて、「古代エジプト神官文字写本」への適用を行う。とくに、記述言語学に基づく文字、語・形態素、構文といった様々な観点からの検索を可能にするための機能開発を行う。加えて、書簡の送受信情報を記述するためのTEI要素などの利用を検討している。
令和5年度(3年目) 言語記述班は地域差抽出作業を完成させるとともに、システム構築班と連携し、言語記述の成果をIIIF画像に連携させるための最終的なファイル作成を実施する。システム構築班は言語記述の成果を原資料のIIIF画像に連携させるとともに、申請代表者と分担者らが開発した「『ヒエラティック古書体学』データベース」をプラットフォームにリンクさせる作業を実施する。この作業を10月までに終え、残りの期間はシステムのバグの修正など微調整を行う。本研究では博物館提供の写真を利用する予定であるが、必要に応じて申請者が現地で写真撮影を実施する。検索システムの公開については、事前に上記博物館学芸員等に連絡をしたうえで、CC BYのライセンスの範囲内で実施する予定である。
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Causes of Carryover |
海外で実施される予定であった学会がオンラインになったため、海外旅費を支出することができず、残高が生じた。
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Research Products
(11 results)