2022 Fiscal Year Research-status Report
Toward semantic analysis of subjunctive expressions and modality in terms of commitment
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21K00485
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
田村 早苗 北星学園大学, 文学部, 准教授 (90728346)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 意味論 / 発話 / 共通基盤 / コミットメント / モダリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究はコミットメント概念を用いた分析として、4年間で【課題A】~コトダ・~モノダ構文の分析、【課題B】主観的表現を含む発話の分析、【課題C】モダリティ表現の分析への拡張、の3つのトピックに取り組むことを計画している。2年目である2022年度は、前年度に引き続き【課題A】~コトダ・~モノダ構文の意味論的分析を進めると同時に、【課題B】主観的表現を含む発話の分析として「~ワケダ」という構文の分析を実施した。 【課題A】の「~コトダ」構文の分析に際しては、前年度から分析に取り入れたFarkas & Donka(2013)の枠組みに基づきつつ、談話参与者間でのコミットメント形成に向けた調整や、「○○について合意したものとしてふるまう」という信念とは別の談話上の合意形成をどのように枠組みの中に組み込むことができるかの検討を進めた。【課題B】に関連する「~ワケダ」構文については、従来の研究で意図・知識ベースの概念を用いた分析が主であったものを、本研究課題が注目するコミットメントをベースにすることで、従来説明しにくかった用法についても1つの枠組みの中に組み込む分析を試みており、2023年度に成果を公開予定である。【A】【B】両課題を進める中で、コミットメントをベースにした形式語用論的モデル案が固まってきており、三木(2019)の言語哲学的な「意味の公共性」、定延(2016)の「あからさまにやってみせる」ものとしての発話という会話・コミュニケーション観との関係を改めて整理する段階に入っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度はコトダ構文の分析について2022年4月に2件、2023年3月に1件ワークショップ等での研究発表を行った。特に、日本語文法の理論的研究者を主たる聴衆とする研究会で口頭発表を行う機会があり、コトダ構文の言語データや形式語用論的分析について詳細な意見交換を行うことができた。また、2022年度からワケダ構文の分析を始めるとともに、研究対象の構文を中心としてコーパスをもちいた自然データの収集(特に、国立国語研究所の「日常会話コーパス」からのデータ)を開始したが、これら2つのトピックに関しては、年度内の研究成果公開を行うことができなかった。進捗がやや遅れているという評価の理由としては、予定していた国内・国外の学会における研究発表ができなかった点と、学術論文として学会誌への投稿が遅れているという点がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、2023年度は【課題A】コトダ・モノダ構文の継続と【課題B】主観的表現を含む発話の分析をふまえた形式語用論的モデルの精緻化と、【課題C】従来のモダリティ表現・コミュニケーション分析の枠組みとの比較および関連付けに取り組む。 まず、コトダ構文の分析について論文をまとめ、2023年度前半に学会誌に投稿する。ワケダ構文、モノダ構文については2023年度前半に分析をまとめ、秋~冬に複数の学会での発表を行う。さらに2023年度夏~秋にかけて、【課題B】に関連する他の言語表現として、感覚表現・個人的な好みを表す表現とコミットメント調整やコミュニケーションとの関係について、終助詞との関係に注目した研究を実施する。 2023年度後半~24年度はこれに加えて、提案した形式語用論的枠組みを適用し【課題C】モダリティ表現の分析も実施する。認識モダリティおよび当為モダリティを扱い、不確定の情報や推論に関する情報と談話参与者間のコミットメントの調整・共有につながるかを検討する。その後、当為モダリティにも分析を広げる。また、先行研究で提案されてきた意図・知識ベースの分析(談話管理理論等)との比較を行い、本研究で明らかになった論点を踏まえたコミットメントベースの分析に先行研究の枠組みを活用することを検討する。 【研究の総括と公開方針】本研究課題に関する成果の情報を研究代表者のresearchmap上で順次公開する。2023年度後期および2024年度に本研究課題に関する研究会を開催するとともに、2024年度に研究報告書の形でまとめて公表する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染状況の影響で、①国内学会・国際学会等での成果発表等に向けて申請していた旅費、および②2022年度の研究会開催にかかる予算の執行機会がなかったため次年度以降に使用する。国際学会の投稿アブストラクトの英文校閲や、研究会等の講師招聘のための人件費についても次年度以降使用する。
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