2022 Fiscal Year Research-status Report
Refinement of the network model in Diachronic Construction Grammar
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21K00489
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
菊田 千春 同志社大学, 文学部, 教授 (40278453)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 通時的構文文法 / 構文ネットワーク / 始動相構文 / 主要部内在型関係節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は認知言語学の枠組みで文法的構文の成立や変化の過程を分析し、構文ネットワークモデルの理論的な検討と精緻化を目指している。以前より研究を進めている始動相構文の研究を踏まえ、主要部内在型関係節構文についての研究へと進めていく。
2022年度は昨年度に引き続き通時的構文文法や構文ネットワークに関する文献の収集を行うと共に、主要部内在型関係節構文についての先行研究の文献調査に着手した。後者について、日本語学での通時的な研究を改めて見直すのに加え、生成文法や認知言語学等の理論的研究にも目を向けた。この構文については「名詞節」分析vs.「副詞節」分析という対立が中心であったのが、特に2010年以降、構文という概念を用い、この対立自体を否定する新たな共時的分析が提案されていることを確認した。この分析には説得力を感じる一方、本研究が捉えようとする通時的な成立や変化にどのように適合するのか、など、新たな問題の視点が得られた。今後はさらに通時的なデータを精査し、理論との調和点を探っていく予定である。
2022年度は2021年8月のInternational Conference of Construction Grammarで口頭発表をおこなった始動相構文の分析の一部分をもとにした論文を執筆し、『同志社大学英語英文学研究』104号に「中世と近世におけるVカカルとVカケルの始動用法:語彙的アスペクト複合動詞と構文ネットワークの観点から」(pp. 99-136)として発表した。それぞれの構文の変化の様相を実証的に検証すると共に、その関連する構文の変化を、構文間の影響関係を踏まえて捉える構文ネットワークを提案した。この問題については、さらに2023年度に近世以降の変化についての論考をまとめる予定をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度、当初の予定では、構文文法や構文ネットワークに関する理論的な研究について、知識を深めると共に、主要部内在型関係節に関する文献調査を終えて、コーパス調査に着手する予定だったが、所属機関の学部長に就任したことなどから、研究が遅れてしまった。業務に慣れたこともあり、2022年度は2021年度に引き続いて、理論的な問題についての文献調査を進め、構文ネットワークを踏まえた始動相の分析についての論考をまとめ、さらに、2021年度に着手する予定であったができなかった主要部内在型関係節について、異なる理論やアプローチでの先行研究の見直し、また、コーパス調査などに取り掛かることができた。このように、2022年度はある程度、当初の計画に沿った研究活動を進めていくことができたものの、昨年度の遅れを挽回するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は学部長の任期は終えたものの、新たな図書館長としての仕事があるが、これまでの経験を踏まえ、計画的に研究を進めていくことにしている。始動相についての研究は、最終的な結論に関し、考察はすでに完了しているので、その論考をできるだけ早期にまとめて投稿する予定をしている。 主要部内在型関係節の先行研究については、2022年度に引き続き、さまざまなアプローチ(国語学的な通時、共時的研究、生成文法による研究、認知言語学による研究、構文文法による研究)をさらに詳細に再検討する。また、コーパス調査については、すでに国立国語研究所の日本語歴史コーパス(平安時代)での予備調査は開始している。このコーパスの場合、文法タグはあるものの、本研究では、構文の解釈が重要であり、さらに前後の文脈を考慮に入れた再考を行う予定であるため、既存の文法タグだけでは手がかりとして不十分である。それぞれの用例についての意味解釈を多面的に考慮に入れる必要があり、予測や仮説を立てながら進めなくてはならない。そのため、データの検証には時間がかかることが予想されるが、新たな理論的知見を取り入れ、着実に進めていく予定である。この2つの方向からの研究を合わせ、本研究がとらえようとしている新たな「構文ネットワーク」あるいは新たな「通時的構文文法」的な分析の提案を目指したい。
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Causes of Carryover |
2022年度は、2021年度に予定していたものの購入できなかったパソコン等の物品を購入することができた。しかし、それでも2022年度もコロナ禍のため、国内の学会が全てオンライン開催となり、旅費等を支出することができす、次年度へ繰り越すことになった。2023年度の学会は、まだオンラインの予定のものもあるが、対面開催になるものもあると見込まれ、出張のための旅費及び書籍などの物品に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)