2021 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語未来形における現在の推量用法の成立についての研究
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21K00497
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
嶋崎 啓 東北大学, 文学研究科, 教授 (60400206)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ドイツ語学 / 文法化 / ドイツ語史 |
Outline of Annual Research Achievements |
初期新高ドイツ語期における法助動詞の認識的(epistemic)用法の用例を収集した。作業の最初の段階としてルター訳聖書(1545年)から用例を集めている。現時点ではkoennen, muessen, moegenを中心にしており、まだ用例の収集が終わっていないが、現時点では明瞭な認識的用法の例はあまりないことが分かった。このことは未来形(werdenの直説法現在+不定詞)の推量用法がルター訳聖書においては散見されることに照らすと、未来形の推量用法の発達が法助動詞の認識的用法よりも先行するように見えるが、まだ確定的ではない。但し、明瞭な未来形の推量用法の確立は未来完了形(werdenの直説法現在+完了不定詞、過去の事態についての現在の推量を表す)の成立によって裏付けられ、それは今のところまだ1587年の「ファウスト博士」において最も古い例が見られるのに対し、法助動詞+完了不定詞における認識的用法の例は1498年の「トリストラント」にすでに見られる。すなわち、未来形の推量用法が法助動詞の認識的用法よりも早いとすると、完了不定詞を伴う推量表す未来形よりも認識的用法としての完了不定詞を伴う法助動詞が早く発達したことと順番が逆になるので、さらに用例の収集を進め、実際に順番が逆であるのか、単純不定詞を伴う法助動詞による認識的用法の発達が実際には未来形の推量用法よりも早かったのかを明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
用例の収集に手間取って当初の予定ほどには進んでいない。主として用例の意味を確定することに時間がかかるためであるが、新型コロナウイルスの感染状況によって旅行ができないことも影響を与えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ルター訳聖書からの用例収集と並んで15世紀の資料からの用例を集める必要がある。法助動詞が完了不定詞を取る場合、中高ドイツ語では認識的用法では用いられなかったが、15世紀当たりから認識的用法が表れるので、それと単純不定詞を取る用例の意味的な連動を調べる必要がある。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染状況により予定していた出張旅行ができなかったため。今年度は社会状況により可能であれば出張旅行を行いたい。
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