2023 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ語未来形における現在の推量用法の成立についての研究
Project/Area Number |
21K00497
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
嶋崎 啓 東北大学, 文学研究科, 教授 (60400206)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ドイツ語学 / 文法化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツ語未来形の認識的用法、すなわち現在の事態についての推量を表す用法が歴史的にどのように発達したのかという問題において、werdenの直説法現在が完了不定詞を伴ういわゆる未来完了形との関連が同じく認識的用法を表すという点から一つの問題となる。これについて、未来完了形が最初の用例において過去の事態についての推量を表し、未来における事態の完了を表さなかったことは用例から明らかであるが、その意味機能が未来形の認識的用法に由来するのかという点については不明なままとなった。その理由は、未来形の認識的用法の起源は一般論を表す用法にあり、これからいつでも起こる一般論として未来の事態を表すか、現在の事態の推量を表すかが区別できない場合が多いため、認識的用法がいつ始まったか確定しがたいことにある。正確には、未来とも現在ともどちらとも解釈可能な用法が多く使用される中で認識的用法が確立したと見るべきである。一方、完了不定詞を伴う法助動詞が過去の事態についての推量を表す用法については15世紀に用例が見られ、未来形の認識的用法や過去の事態の推量を表す未来完了形よりも時期的に少し早い。それぞれの形式と用法における影響関係は明瞭ではないが、中高ドイツ語期に可能であった法助動詞の認識的用法が初期新高ドイツ語期に完了不定詞を伴う場合にも可能になり、それとは別に成立した未来形がおそらく法助動詞とは無関係に認識的用法を可能にし、しかし完了不定詞を伴う法助動詞が過去の推量を表すようになったことに連動して未来完了形も過去の事態の推量を表すようになったと考えられる。その際、完了不定詞が過去を表すようになったことが背景となっており、そこには初期新高ドイツ語期における現在完了形の過去時制化が大きな影響を与えたと言える。
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