2021 Fiscal Year Research-status Report
同調現象の多層的メカニズムの解明に向けて:大学生の調和的対話構築の研究
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21K00502
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
難波 彩子 関西学院大学, 国際学部, 教授 (00638760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 邦好 愛知大学, 文学部, 教授 (20319172)
原田 康也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80189711)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 同調 / リスナーシップ / 一体感 / スタイルシフト / 声の多重性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画当初は、(1)新たなデータ収集、(2)国内外での研究発表、(3)既存のデータを用いた継続的なデータ分析、を予定していたが、令和3年度ではコロナウイルスの蔓延状況が継続していたため新たなデータ収集(1)は実施できず、(2)(3)の活動に重点を置き、主に研究代表者が既存のデータの分析に基づいて同調現象に関わる2つの研究発表を行った。国際語用論学会(2021年6月オンライン)では、既存の大学生同士の会話データの中で参与者同士による同調現象と社会的な役割の関係性に着目し、同調が顕著に起こる会話の盛り上がりで観察された引用表現にみられるスタイルシフトの分析を行った。分析には、場の理論(清水 2004; Hanks et al. 2019)と「声」(Bakhtin 1981; Wertsch 1991)の概念を援用することで、引用表現の中で複数の人称代名詞へのスタイルシフト、敬語が含まれる丁寧表現から平易な表現へのスタイルシフトなどを特定し、複数の「声」が反映された「今・ここ」で起こる即興的ドラマが展開されていることを提示した。これらのスタイルシフトには言語的および非言語的行動に基づいた参与者同士の同調が埋め込まれていることを指摘した。動的語用論研究会(2022年3月)では、同調現象を創造する同時性と反復性に焦点をおいた。場の語用論から会話の一体感のプロセスの一端を提示することによって、共振を伴う身体的なコミュニケーションを重ねることは一見目に見えない無意識的な行為であるが、それこそがおしゃべりの本質であり、仲間作りにもつながっていることを指摘した。そこに、「大学」という社会空間におけるコミュニケーションの意義があることを強調した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度は新データの収集を計画し、分担者2名ともミーティングを行って準備を進めていたが、コロナウイルスの蔓延でデータ収集を実施することができなかった。そのため、研究の進行が現在遅れている状況にある。この研究状況を補完するために、既存のデータの分析を通じて同調現象の研究を深め、国内外での学会や研究会での研究発表を通じて発信していくことに努めた。本研究で分析する計画にしていたスタイルシフトの分析とその分析に対する理論的解釈として「声」の概念(Bakhtin 1981; Wertsch 1991)を導入することによって、同調現象の多重的な特質が明らかになってきた。また、場の語用論(清水 2004; Hanks et al. 2019)の解釈を取り入れることによって同調現象の同時性と反復性を明確に提示することにつながった。これらの既存のデータ分析による成果に基づいて、令和4年度では新データを収集し、多様な大学生の会話でみられる同調現象の分析を掘り下げていく。本研究のデータ収集の可否は、大学生が対象のため、学生や教職員のコロナウイルス感染状況に大きく左右される。令和4年度は全面的に対面授業にも切り替わり学生も大学に来ている状況となるため、データ収集を進めていく予定で進めているが、万が一状況が悪化した場合は、オンラインによるデータ収集を代替的に行うことを検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究を推進する上で新データの収集が重要となる。令和4年度では研究代表者が関わる関西圏を中心にデータ収集を行い、コロナウイルスの蔓延状況を考慮しながら徐々に研究分担者が関わる首都圏と中京圏についてもデータ収集を広げていくことを計画している。万が一、状況が悪化した場合は、オンライン上でのデータ収集に切り替えることも対応策として計画している。また、研究代表者を中心に、同調現象に関わる論文も執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、コロナウイルスの蔓延で当初予定していた新データの収集や、スイスでの国際学会が急遽オンラインに切り替わった。また、分担者2名と対面でのミーティングも数回予定していたが、それも実施できなかったため。 令和4年度は、データ収集や分担者との対面での会議も実施する予定であり、それらに関わる費用にあてることを計画している。
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