2021 Fiscal Year Research-status Report
ハワイ・クレオールにおける視覚的語彙認識―ニ言語変種併用の及ぼす影響―
Project/Area Number |
21K00506
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Research Institution | Aichi University of the Arts |
Principal Investigator |
井上 彩 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (90634915)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クレオール / ハワイ・クレオール / 二言語変種(方言)併用 / 視覚的語彙認識 / 書記素と音素のマッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、標準英語と英語変種(ハワイ・クレオール)の二言語変種(二方言)併用話者であることが視覚的に語彙を認識する際にどのような影響を与えるかについて心理言語学の手法を用いて分析・考察することである。研究代表者による先行研究 (Inoue 2004) によって提案された仮説、「ハワイ・クレオール話者は標準英語、ハワイ・クレオール二つの音韻システムを司るゆえに二方言併用話者はより複雑な書記素と音素のマッピングが行われているのではないか」を検証するためにデザインされた実験はすでにハワイで実施されて完了しており、89名の被験者が実験に参加した。今回の研究課題においては実験結果の分析をし、学会発表や研究協力者との打ち合わせを通じて考察と探求を進めることを目的としている。 令和3年度はコロナ禍が続き渡米できなかったこともあり、データを整備することによって今後の分析の準備を行った。また、研究協力者との研究打ち合わせによって、申請者による先行研究 (Inoue 2004) で実施した過去の実験結果についても、近年一般的に使用されるようになった統計分析手法やソフトを用いて新たに再分析することによって、その当時には明らかにならなかったより詳細な結果や解釈が得られる可能性があることが指摘された。今後は先行研究 (Inoue 2004)による過去の実験結果をも分析の対象に含めてより大規模な分析を行うことを決め、研究の規模を少し拡大した。 研究規模を拡大することにより、より分析の手間や時間がかかるが、基盤とする参加者の数が増えるためにより強力な分析結果を出すことが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究を進めるにあたってはまず米国に渡航して、研究協力者であるハワイ大学教授やハワイ・クレオールのネィティブスピーカー教員と研究打ち合わせを行う予定であったが新型コロナウィルスの世界的な感染が長引き、研究協力者との打ち合わせをすることができない状態が続いていた。また、ハワイ大学の言語学ラボや図書館を利用することもできなかったため研究課題の進捗状況は遅れている。今後も当面は渡航の目途がたっていないため、オンラインによる研究打ち合わせによって助言をいただき、それに基づいてデータを整備しながら、少しずつ分析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症への対応のために校務も授業も通常の状態と比べて負担がふえておりその結果として研究のために使える時間が減少していたため、R4年度はバイアウト制度を利用させていただいて担当する授業を1コマ非常勤講師の先生にお願いできることとなった。今年度はEメールやオンラインミーティングによる研究打ち合わせをお願いしながらデータの整備を続け、短期の海外渡航が可能となれば9月または2月に渡米してデータ分析を始める予定である。 また、令和3年度は参加を希望していた国際学会(Methods in Dialectology、Society of Pidgins and Creole Linguistics Annual Winter Meeting)の日程が校務と重なっておりオンラインでの学会参加も叶わなかったが、令和4年度には予備的な分析結果の発表を発表し、分析手法についてのフィードバックを得ることを目指したい。
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Causes of Carryover |
令和3年度は新型コロナウィルスの世界的な感染が長引き、予定していた米国ハワイ州の研究協力者との打ち合わせができない状態が続いていたため研究打ち合わせや分析のための渡米の費用や国外での国際学会・研究会に参加する旅費を使用しなかった。 令和4年度もおそらく前半は短期の海外渡航ができる状態になるのは難しいのではないかと予測される。研究協力者との研究打ち合わせは当面の間はオンラインの打ち合わせとなる予定である。当面旅費を使用する予定がなくなったため研究費は今後の論文執筆の際に必要となる書籍や資料の購入やオンライン打ち合わせの環境を整備するための機器やオンライン会議アプリのライセンスなどの購入のために使用する予定である。令和4年度後半に短期の海外渡航が可能な状況となれば渡米してハワイ大学での研究打ち合わせや言語学ラボでの分析を実施するために国外研修の費用を使用する。対面での国際学会に参加できるような状況であれば学会参加費用も使用する。
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