2022 Fiscal Year Research-status Report
ハワイ・クレオールにおける視覚的語彙認識―ニ言語変種併用の及ぼす影響―
Project/Area Number |
21K00506
|
Research Institution | Aichi University of the Arts |
Principal Investigator |
井上 彩 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (90634915)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | クレオール / ハワイ・クレオール / 視覚的語彙認識 / 二方言併用 / 書記素と音素のマッピング / 正書法 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度も新型コロナウィルスにより国外への移動が制限された時期が長かったため、前期は研究を進めるために米国のハワイ大学を訪問し、研究協力者と研究打ち合わせを行うことが困難な時期が続いていた。令和5年3月にようやく渡米することができ、研究協力者であるハワイ大学教授やハワイ・クレオールのネィティブスピーカー教員と研究打ち合わせを行うことができた。 また、令和5年3月には研究テーマと研究手法の整合性についての建設的批判を得るために、オンラインで開催された日本メディア英語学会中部地区2022年度第1回研究例会にて、「複数の言語・言語変種との接触と英語語彙認識プロセスについて:多文化社会ハワイの場合」という題目で研究発表を行った。 令和5年3月初旬にはハワイ大学を訪問することができた。研究協力者であるハワイ大学言語学科の Amy Schafer 教授と研究打ち合わせをしていただき、今後の分析手法について検討した。PsyScopeによる実験によって得られたデータファイルを検討した結果、文全体に埋め込まれた語彙認識のデータは、ターゲットとする語彙だけでなく、文全体の処理の速度に関するデータも取得できているため、語彙認識以外の文処理のプロセスについても分析することが可能であることがわかった。また、もし必要であれば、さらに新たな被験者を集めて実験を行う可能性も検討したが、研究代表者が長期間ハワイ大学に滞在することは困難なため、限られた研究期間の中で実現できるかどうか、今後も検討を続けることとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスにより国外への移動や入国に制限のあった時期が長かったため、研究を進めるために米国のハワイ大学を訪問し、研究協力者と研究打ち合わせを行うことが困難な時期が続いており、令和4年度前半は研究が進まない状況であった。令和5年3月になってようやく渡米することができ、研究協力者であるハワイ大学教授と研究打ち合わせを行い、データ分析の方法についての助言をいただき今後の研究の手順を決めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
3月に打ち合わせをした際に、令和5年度前期にはデータを整備して、9月に再度ハワイ大学を訪問した時に、分析をするというスケジュールが決まった。 また今回の打ち合わせでは、クレオール言語だけでなく、少数言語における正書法の選択への意義についても話し合った。正書法をまだ持たない少数言語の研究においては、正書法を整備し、その普及に努めることによって多くの場合は危機に瀕している少数言語の将来的な記述・使用・保存に大きく貢献することができる。その際には既存の言語の正書法を借用・応用する方法と新たにその言語の音韻体系に沿った正書法を作るという二つの選択がある。当該言語の自律性・独立性を担保できる音韻的正書法は言語記述・保全の観点からもまた話者からも望まれ、好ましいと判断されることが多いが、しばしばその実用化を阻むのが、学習するのが困難なのではないかという点である。 当該研究でのハワイ・クレオールの実験では、2つの実験の合間に10分間ほどのセッションを設けてハワイ・クレオールの音韻的正書法を学習してもらっているが、音韻的正書法を短時間ではあるが学習することがクレオール話者の文処理にとってどのような効果があるかを分析することにより、クレオール言語だけでなく、正書法を持たない少数言語にとっての正書法選択への知見をもたらす可能性があることがわかった。今後のデータ分析において正書法に関する部分を特化することと、また、正書法選択に関する先行文献を調査することが必要となる。 正書法選択についての知見が得られれば、ピジン・クレオール言語研究の学会だけでなく、International Conference on Language Documentation and Conservation (ICLDC) などの言語記述・保全に関する学会での発表も検討したい。
|
Causes of Carryover |
令和4年度も新型コロナウィルスへの対応により国外への移動や入国に制限のあった時期が長かったため、研究協力者と研究打ち合わせを行うためにハワイ大学を訪問したり、国際学会・研究会に参加するための旅費を使用しなかったことが次年度使用が生じた理由である。 令和5年度は短期の海外渡航が可能な状態が続く見込みであるため、これまでの遅れを取り戻すために9月と3月に研究打ち合わせ・資料収集のためにハワイ大学を訪問する予定である。また、国際学会・研究会への参加費用としても使用する計画である。
|