2021 Fiscal Year Research-status Report
日本語のダイクシス表現に関する語用論的研究ー敬語を中心としてー
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21K00508
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
澤田 淳 青山学院大学, 文学部, 教授 (80589804)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 敬語 / ダイクシス / 語用論 / 日本語の歴史 / 対照研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績の概要は次の通りである。 1.日本語(現代語)の「相対敬語」(話し手、聞き手、話題の人物からなる三者関係の中で、話題の人物に対する尊敬待遇のあり方が決定される敬語運用)が「上下型」、「内外型」、「親疎型」の3種(「上下型」の下位類を含むと4つ)に類型化できることを提案した(「相対敬語とは何か―相対敬語の類型化に基づく敬語運用の考察―」早稲田大学日本語学会(編)『早稲田大学日本語学会設立60周年記念論文集 第2冊―言葉のはたらき―』ひつじ書房、2021年)。 2.上記の相対敬語の類型をもとに、敬語運用に関する歴史的考察を行い、(i)日本語は、歴史的に、「上下型」、「内外型」、「親疎型」の順に相対敬語の運用の幅を拡げてきた点、(ii)現代語(共通語)においては、「内外型」や「親疎型」の相対敬語の運用が活発であるのに対して、「上下型」の相対敬語は弱まる方向に進んでいる点などを論じた。さらに、上記の相対敬語の類型が韓国語の敬語運用との対照研究を行う上でも有効な枠組みとなる点を指摘した(「日本語敬語の運用に関する語用論的研究―相対敬語の類型化をもとに―」近藤泰弘・澤田淳(編)『敬語の文法と語用論』開拓社、2022年)。 3.指示対象の属性を喚起する記憶指示の「あの」について、特に「は」と「が」の共起性の違い(例:「あの山田{が/*は}遅刻した」)に着目した情報構造的観点からの考察を行った(Information structure of the Japanese mirative demonstrative ano.『神戸言語学論叢』第13号、2022年、澤田治氏との共著)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題の中心的テーマである敬語に関して、歴史や方言、他言語との対照を含めた総合的な観点からの考察を進めることができている。特に、敬語に関する包括的な論集(近藤泰弘・澤田淳(編)『敬語の文法と語用論』開拓社、2022年)の刊行は、本年度の大きな成果の1つであったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、敬語について多角的な観点から考察を深める。特に、次年度は、中古語の敬語抑制のシステムに関する調査・分析を行う予定である。また、指示詞などの他のダイクシス表現に関する記述的・理論的考察も引き続き進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、学会・研究会等がオンラインとなり、旅費の支出が生じなかった。次年度は、学会・研究会が対面で行われる可能性もあるので、それらの旅費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)