2021 Fiscal Year Research-status Report
「味を表す表現」からみた言語と文化の相関性に関する研究
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21K00512
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
武藤 彩加 中部大学, 人文学部, 教授 (00412809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 泰信 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40369864)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 生理学的普遍性 / 多様性 / 味を表す表現 / 文化人類学 / エスノグラフィックな定性的調査 / 食文化 / 身体性 / 認知的動機づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
食感覚の擬音語・擬態語、そしてオノマトペと食べ物との関係について考察を進めた。具体的には、母語話者65名(18~22歳の大学生)を対象にアンケート調査を行った。流動となめらかさ、水分等、力学的特性に対応すると思われる14の食品を示し、その食品の特性を表現する語をいくつか示したうえで適当な表現を選択するよう依頼した(複数回答可、自由記述可)。その結果、まず全体をみると粘りとぬめり表現が異なり語数・延べ語数とも最も多く使用された。このうちハチミツとキャラメルについてはともにネットリが最も多く使用されたが(61・5%―69.2%)、チーズにはトロトロ(64.6%)が使用された。中でも注意すべきは、納豆には100%近い割合でネバネバが選択されたという点である(95.4%)。他の項目においても同様に、例えば水分を表す場合、メロンにはみずみずしい(78.5%)が使用されるのに対し、ブランデーケーキにはシットリ(76.9%)が使用される。また破砕においては、氷にはガリガリ(90.8%)、コーンスナックにはカリカリ(75.4%)、レタスにはシャキシャキ(53.1%)といった表現が好まれる。他にも噛み応えにおいて、団子とパスタにはモチモチが多く使用された(90.8%、86.2%)。つまり、母語話者の多くがこうした表現を好んで使用する。例えば納豆の食感について英語ではchewy、sticky、gummyなどと表し得るであろうが、日本語においてはベトベト、ベタベタ、ネットリなど他の粘りの表現ではなく、やはりネバネバが最も自然であろう。こうした食品と食感のオノマトペとの結びつきについて言語学的な観点からの検証はこれまであまりされておらず、辞書等の記載も不十分なため、自然な日本語のデータの一つとして示すことに本研究の独自性と意義がある。むろん今後、年代や調査数を広げさらに詳細に調査をすべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響により海外での文化人類学的/エスノグラフィックな定性的調査(質的研究)が実施できなかったため。今後はデータ収集や分析等を先に進めつつ準備をしながら適宜対応する。
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Strategy for Future Research Activity |
①官能検査用語(味の表現)の国際標準規格であるISO 5492 Sensory analysis VocabularyおよびJIS Z 8144官能評価用語等をもとに、日英語の味覚表現を網羅的に収集・分類し全体を把握する→②どの表現が各国の英語母語話者に多く使用されるのかをGloWbEコーパスにより国別に整理する(味覚系・食感系・情報系別で表現を抽出)→③その結果をもとに、各国で各表現がTwitter上でどのように使用されているかもみる(検索ワードのツイート数およびその事例データを国別に収集)→④各地域において、テクスチャ表現がどの程度使用されるのかを定量調査により明らかにする(男女差・地域差・年齢差を考慮し、1か国500サンプル規模・70問)。これと同時に、今年度実施した、食感覚の擬音語・擬態語(オノマトペと食べ物との関係)に関するアンケート調査を英語母語話者を対象に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、海外での研究調査が実施できなかったため。
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Research Products
(4 results)
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[Book] おいしい味の表現術2022
Author(s)
瀬戸 賢一、味ことば研究ラボラトリー
Total Pages
272
Publisher
集英社インターナショナル
ISBN
978-4-7976-8095-9
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