2021 Fiscal Year Research-status Report
An investigation of Datong dialects of Chinese spoken in the Mongolian-inhabited area
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21K00515
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
川澄 哲也 松山大学, 経済学部, 教授 (30590252)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 言語接触 / 漢語方言 / モンゴル族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自身が2014年度以来JSPS科研費(26770154、17K13452[いずれも若手B])の資金援助の下で進めてきた中国青海省西寧市大通回族土族自治県(以下「大通県」)における言語学的調査を引き継ぐものである。研究の主要な内容は以下の2点である。1点目は、COVID-19の世界的流行により最終局面まで達することのできなかった前科研の補完作業として、大通県のチベット族集住地区(向化郷)における漢語調査を進めることである。2点目は、大通県のモンゴル族集住地域(宝庫郷を予定)および漢・モンゴル族雑居地域(調査地未定)の漢語方言2種に対する言語学的調査を実施し、両者を対照することにより、従来の言語接触研究では十分に明らかにできていなかった言語変容原理の1つ“Negotiation”に対する考察を進めることである。 2021年度はCOVID-19がなお収束しなかったため、実地調査に赴くことはできなかったが、代替措置として、本研究の調査対象地域(大通県北~東部)と隣接する青海省門源回族自治県の出身で、上海に在住するチベット族W氏のご協力を得て、オンラインにて漢語門源方言の初歩的な文法調査を進めた。また比較対象とするために、日本に在住する中国語母語話者4名に対しても同様の聞き取り調査を行った。その結果、例えばVO型離合詞の倒置用法に対する容認度について、W氏と他4名の間にはほぼ正反対と言える文法性判断の違いが確認され、漢語門源方言の特質の一端を把握することができた。 なお、自身の所属機関異動等、諸般の事情により、2021年度の研究実績を論文或いは研究発表の形で公表することができていない。この点は2022年度に補う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響により、本研究本来の目的である実地調査が行なえておらず、順調に進展していると言うことはできない。しかしながら、このことについては研究計画調書作成の段階で予測済みで、調書においても「COVID-19の状況によっては、渡航自体が叶わない事態も想定される。その場合、渡航制限が緩和されるまでの当面の代替措置として(中略)、オンラインにて門源県の方言調査を行う」と記載していた。この代替措置としての調査は行うことができ、一定の成果も得られているため、「やや遅れている」程度であると判断したい。
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Strategy for Future Research Activity |
現地に赴くことが可能な状況となり次第、できる限り長期の実地調査を計画・実施し、これまでの遅れを取り戻していきたい。引き続き実地調査が叶わない状況になってしまった場合には、2021年度と同様に、オンラインによる漢語門源方言の調査を進める。より詳細な文法調査に取り組むと共に、2021年度は行わなかった音声面の調査についても試験的に進めてみたい。 一方で、これまでの調査で収集した漢語青海方言の語彙データ、或いは先行研究のうち特に辞書類を利用し、Matras, Yaron(2020)Language Contact(2nd edition. Cambridge University Press)が提唱する借用語に関する法則性が妥当か否かを漢語青海方言の立場から検討し、言語接触研究一般に対して貢献することも目指す。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、当初予定していた実地調査に赴くことができず、旅費が未消化となったために、次年度使用額が生じた。2022年度に中国渡航が可能になった場合には、この額を利用して、当初の計画よりも長期の実地調査を実施する。
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