2021 Fiscal Year Research-status Report
ユカギール語系統論の視座:論点の整理と将来への展望
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21K00526
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
遠藤 史 和歌山大学, 経済学部, 教授 (20203672)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ユカギール語 / ユカギール語系統論 / 歴史・比較言語学 / 北方諸言語研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
1940年代から現在までの間に提案された種々のユカギール語系統論の代表格であるCollinder(1940)“Jukagirisch und Uralisch”および Tailleur(1959)“Plaidoyer pour le youkaghir, branche orientale de la famille ouralienne”などに見られる主要な論点の検討に着手した。ユカギール語系統論に関して、現在までの最も注目すべき提案である「ウラル語=ユカギール語同系説」から検討を始めるのが妥当であろうと考えたためである。 これらの文献の収集と読解を進めることと並行して、他の資料の収集にも努めた。現在までのところ、「ウラル語=ユカギール語同系説」に関する唯一の充実した具体的な資料と言ってよいNikolaeva(2006)A Historical Dictionary of Yukaghirを入手するとともに、報告者自身が収集してきたツンドラおよびコリマ・ユカギール語資料も参照しつつ、主要な論点の整理を進める作業に着手した。 上記と並行して、将来の考察のために必要となる資料の収集にも努めた。ユカギール語に関するもう一つの系統論の流れと言える、エスキモー=アレウト語との同系論に関して、最も包括的かつ先進的であるFortescue(1998) Language Relations across Bering Straitを入手するとともに、そこに含まれる論点の把握と整理にも予備的に着手した。また、近年の比較言語学の研究の発展を着実に把握するため、最近出版されたハンドブック等を参照し、その問題設定と研究手法の把握、自らの知識のアップデートに努めた。 本年度は資料の収集と論点の把握に集中したため、まだ具体的な研究成果の出版という段階に至っていないが、次年度以降の研究に向けた準備作業をほぼ完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度のとりあえずの目標である3点、(1)基本的文献の収集を行うこと、(2)それらの中に含まれる基本的趣旨の把握に着手すること、および(3)近年の比較言語学の問題設定と研究手法を把握した上で知識のアップデートに努めること、をほぼ達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度着手した「ウラル語=ユカギール語同系説」の代表的文献に含まれている基本的な趣旨をより正確に把握するとともに、この分野のさらなる文献の収集と調査に努める。その上で、これらの研究が達成した成果は何か、そして未解決のまま残されてしまった課題は何か等の論点整理を行い、論文の作成を進める。 また、ユカギール語系統論に関して、エスキモー=アレウト語との同系説に関する論点の把握に努める。 近年の歴史・比較言語学の成果を援用することによって、上記で得られた論点を再検討する作業に着手する。特にFortescue(1998) Language Relations across Bering Straitが提起している言語接触の問題に関して、北方諸言語について、系統関係/言語接触の二分法を超えた新たな提案を展望できる可能性について考察を進めていく。
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Causes of Carryover |
ユカギール語系統論および最新の比較言語学についての基本的な文献の収集が計画より若干遅れており、まだ十分でないと考えられるため。これらについて次年度に若干の額を残したうえで着実な入手に努める予定である。
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