2021 Fiscal Year Research-status Report
A Syntactic Study on the Interpretation of Null Arguments in Japanese Sign Language: From a perspective of Simultaneity in Externalization
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21K00528
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
上田 由紀子 山口大学, 人文学部, 教授 (90447194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内堀 朝子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70366566)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CL動詞 / リファレンシャル・シフト / 接続表現 / 非手指標識(NMM) / 頭の動き / 外在化 / Form Sequence |
Outline of Annual Research Achievements |
手話言語は,音声言語と異なり,複数の出力手段(手指および非手指標識)により,同時に複数の文要素の外在化が可能である。この手話言語の同時外在化特性が言語理論研究にもたらすものは何か?この大きな問いに答えるために,本研究課題では,特に、非手指標識(以後、NMM)に注目して、日本手話(以後、JSL)を観察・分析していくことを最大の特徴とし,2021年度は,以下の2つの視点からJSLの統語的・記述的研究に取り組んだ。 (i) 同時外在化現象が関わる現象として,JSLの削除文における空項指示解釈のメカニズムを無変化動詞、CL動詞、およびレファレンシャル・シフト(以後、RS:サイナー自身が指示対象の側にシフト して行う表現)を伴った場合を取り上げ、非手指標識(NMM)に注目して、ネイティブサイナーの研究協力を得ながら,データを収集,空項指示の事実とその統語構造の提案を試みた。また、空目的語の解釈が不定の要素(pro-SOMETHING)の場合、音形が伴わなくとも、削除文の中のVP様態副詞相当表現としてのNMMの動詞への波及を阻止しているように見える現象を観察した。この研究成果の一部は、国内学会にて発表した。 (ii)日本手話接続表現には、手指を伴う接続表現もあるが、2021年度は、手指を伴わないNMMを取り上げた。統語的識別テストの1つであるextraction testに基づいた接続表現としてのNMM「頭の動き」に関する記述的研究行った。従来報告されてきた様々なタイプの接続表現としてのNMMが、どのような統語範疇を繋ぎ,どのような構造を持つのかという視点から整理し直すことを試みた。現在までに収集したデータに関してではあるが,Chomsky (2021)等で提案されたForm Sequenceとの関係も含め検討した。それらの成果の一部は、次年度国内学会で発表予定である(採択済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍においても、ネイティブサイナーの方の積極的な研究協力のおかげで、基本的には、オンラインにて調査を継続的に行うことができ、概ね順調に研究は進展している。その研究成果の一部は国内学会(オンライン)にて発表した。 予算の執行は一部予定通りにいかなかった。理由は、研究協力者や手話通訳者への交通費および研究打ち合わのための旅費がコロナ影響でオンライン式へ変更せざるを得なかったため、来年度以降に繰り越すこととなったためである。 世界の手話言語と比較しても、JSLの記述的資料や学術情報は少ない。そのため、調査を進める中でネイティブサイナーの方からのご助言からの気づきが多く、それを元に、調査に使用する動詞の種類を変更したり、過去にとったデータを再確認し直したりする作業が繰り返された。収集したデータをより見やすく、効率よく利用できるようにする工夫が必要である。申請当初は、収集データ整理法に関しての問題意識は薄かったが、今後の研究の進展の効率化とサイナーの方の負担の減軽にも繋がる重要な点と考え、来年度以降、検討すべき課題として追加したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、コロナの状況に合わせ、ネイティブサイナーの研究協力者の方には引き続き、オンラインもしくは対面での調査協力をお願いし、継続的な調査を行う。 2021年度に引き続き、音形を持たない(発音されない)文要素含む文の外在化とその解釈の仕組みを非手指表現(NMM)に注目して、探究していく。 来年度前半までは、国内外の学会・研究会等のほとんどがオンライン開催を既に発表しているが、年度後半以降は、対面式での開催の可能性も増し、中間的研究成果の国内外での発表も積極的に行うに予定である。旅費等の使用も可能になると考え、予算の執行上の問題もなくなると考える。 口頭発表での助言を受け、論文としてまとめ、国内外の雑誌等へ投稿する。 追加の課題として、収集したデータの効率的な利用を可能にする整理法を検討する。
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Causes of Carryover |
研究打ち合わせおよび研究成果発表のための旅費を全く使用することができなかったことが主な理由である。調査方法が対面式からオンラインへ式へ変更したことにより、研究協力者および手話通訳者への交通費も予定していたが、執行できなかった。また、当該年度の後半に予定してた調査の一部が、研究協力者の体調不良によりできなかったため、予定よりも謝金への支出が減ったためである。 次年度の前半は未だオンライン開催を発表している学会も多いが、年度後半には研究成果の国内外での発表も計画している(旅費)。また、調査も対面式が可能となった場合は、研究協力者および手話通訳への交通費も必要となる(旅費)。 追加の課題として、収集したデータの効率的利用を目的とした資料整理を検討する。これに際し、学生アルバイトを予定している(謝金:2ヶ月間 X 院生2名程度)。
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Research Products
(2 results)