2022 Fiscal Year Research-status Report
A Syntactic Study on the Interpretation of Null Arguments in Japanese Sign Language: From a perspective of Simultaneity in Externalization
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21K00528
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
上田 由紀子 山口大学, 人文学部, 教授 (90447194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内堀 朝子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70366566)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本手話 / CL動詞 / RS / NM形態素 / VP様態副詞形態素 / 波及 |
Outline of Annual Research Achievements |
手話言語は,複数の出力手段(手指および非手指標識:以後,NM形態素)により,同時に複数の文要素の外在化が可能である。この同時外在化特性からの知見が言語理論の構築にいかなる示唆を与えるのかが本研究課題の大きな目的である。R4年度は特に,CL動詞およびロール・シフト(以後,RS)を伴う文におけるVP様態副詞相当表現のNM形態素(以後,VP様態副詞NM形態素)の波及に注目して観察・分析を行い,その成果を国内学会にて発表した(日本言語学会,R4年6月18日)。 R4(2022)年度の実績は主に以下の2点である。 (i) R3(2021)年度に,同時外在化現象が関わる現象として,JSLの削除文における空項指示解釈について,CL動詞(SASS)、およびRSを伴った場合を取り上げ,VP様態副NM形態素に注目して,空項指示の事実とその統語構造の提案を試みた。空目的語の解釈が不定の要素(pro-SOMETHING)の場合,音形が伴わなくとも、削除文の中のVP様態副詞NM形態素の動詞への波及が阻止されていると考えられる現象を観察したが,その後のネイティブサイナーとの協働調査の中で,(非)CL動詞,RS,VP様態副詞NM形態素の波及には,より複雑な実態があることが見えてきた。そのため,R4(2022)年度では,より厳密にRSの領域を分類し,主にCL動詞におけるVP様態副詞NM形態素の波及可能性を調査した。その成果の一部は,国内学会で報告する予定である(採択済み)。 (ii)R3年度に引き続き,JSLのNM形態素のみで生起する接続表現「頭の動き」を取り上げ,統語的識別テストの1つである取り出しテストに基づき,従来報告されてきた様々なタイプの接続表現としてのNM形態素が、どのような統語要素を繋ぎ,どのような構造を持つのか整理した。成果の一部は国内学会で報告した(日本言語学会,R4年6月18日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R4年度は,R3年度に引き続き,日本手話の(非)CL動詞における日本手話の空項を伴う文に対し,RSも踏まえ,2つのタイプの空目的語文,①語彙動詞文と②/やる/代動詞文のそれぞれの派生を検討した。ネイティブサイナーとの協働調査は定期的に進めることができており,想定以上の新たな事実が観察されている意味で,(2)概ね順調を選んだ。しかしながら、調査の中で,RSを伴う文において,RSの出現パターンが従来言われてきた事実とは異なるパターンの出現可能性があること、また、RSのタイプにより,VP様態副詞NM形態素の波及現象が異なる振る舞いをすることも明らかになり,RS自体のメカニズムとそれを伴う文の文構造に関して、より慎重に厳密な調査と分析が必要であることも分かり,現在取り組んでいる。研究成果の一部は,学会等で毎年数回報告している。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度に引き続き,JSLにおけるRSの基本的なメカニズムと構造(特に行動RS)についてVP様態副詞NM形態素の波及との関係を明らかにし,さらに次の段階として,提案されたRSのメカニズムと構造を仮定した上で,音形のない文要素の解釈について、改めて検討する予定である。 また,我々の調査では,引用RSとも行動RSとも言えないRSの存在を観察している。これらをどのように捉えていくかも検討する必要がある。 最終年度は,これまでの研究成果を言語学に興味を持つろうの学生・研究者とも共有できるような機会も催す予定である。
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Causes of Carryover |
国外での研究成果の報告を見込んで旅費を申請したが,R3年度、4年度はほとんの学会や会議がオンライン開催となり,旅費が充分に使用できなかったため,次年度使用額が発生した。最終年度は,学会等も対面開催の方向へ戻ると期待されるので,旅費として使用予定である。
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Research Products
(4 results)