2021 Fiscal Year Research-status Report
Linguistic Diversity in the Southern Andean Highlands and Oral Narratives in Indigenous Languages
Project/Area Number |
21K00532
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤田 護 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 講師 (50726346)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口承文学 / 存在論的転回 / パースペクティヴィズム / アイマラ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、実施者がこれまで専門としてきたアンデス高地の多数派の先住民言語であるアイマラ語とケチュア語に加え、ボリビア西南部の話者の少ないウル・チパヤ語に研究対象を拡大することで、新たな視座を獲得することを目指している。この点について、この初年度である2021年度に現地調査を通じて必要な人脈を構築することを予定していたが、コロナ禍の影響で海外渡航の禁止が長引いたために、年度末まで含めて出張が適わず、現在2022年度の夏季休暇を利用した現地調査に向け調整を続けている。結果として、現地調査を基盤とする調査研究については一年の開始の遅れを被った。 このような状況下ではあったが、可能なところから研究に取りかかり、進捗を生むように努めた。既に過去の科研費のプロジェクトを通じて入手していた文献を元にウル・チパヤ語の文献調査を進め、言語の基本的特徴を把握しつつ、2022年度に向けた調査の下準備をさらに強化した。また、研究計画の理論的側面であるエドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロの枠組みに基づいて、アンデス先住民の口承文学におけるパースペクティヴィズムの比較と類型化に取り組んだ。これについては2022年度中に、日本口承文芸学会年次大会でのシンポジウム基調講演というかたちで学会発表を行い、同時に同年度中に論文二本の公刊を予定するところまで漕ぎつけた。 したがって、困難な状況下ではあったが、研究初年度の予備的文献サーベイと理論的考察を進めることに関して一定の進捗をみており、2022年度からの調査の本格化に備えることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は言語人類学にもとづく現地調査を中心とした研究であり、現地調査による人脈構築を通じて新しい研究領域を開拓することを目指していたが、コロナ禍の長期化により海外渡航が禁止された状況が年度末まで続き、現地調査が実施できなかったことで研究の進捗に遅れが生じている。上述したように、このような状況下でも研究自体は文献調査や理論的考察を通じた進展をみているが、現地調査ができなかったために予算執行が遅れており、この点については2022年度から本格化することになる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
既に2022年度において現地調査は行える目途が立っているため、一年遅れでの進行ではあるが、2022年度より本格的に2021年度に予定していた研究内容に取りかかる見込みである。やや研究を加速して進めたいと考えているが、現地調査での人脈構築には一定の時間を要するため、最終的に終了年度を一年繰り越しての実施を視野に入れて、この点はじっくりと取り組みたいと考えている。 また同時に、2021年度に特に理論的考察の面での研究は重要な進展をみているため、当初の計画よりもやや欲張ることにして、口承文学における人間―動物関係を中心としたパースペクティヴィズムの類型化という当初の目標に加え、口承文学の語りのメカニズムの解明とこれが世代間伝承や教育での口承文学の扱いににどのような含意をもつかについての考察を、併せ進めていきたいと考えている。これによって、2021年度のコロナ禍による遅れを取り戻して上回るような研究の成果を生むことにしたい。
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Causes of Carryover |
本研究では現地調査での海外渡航費および現地での資料購入費が主要な支出を占めているが、2021年度はコロナ禍の長期化により現地渡航が実施できなかったため、2022年度に本格的に支出を開始する予定をしている。2022年度と2023年度の調査をやや加速して実施すると同時に、2024年度に一部を繰り越して研究を実施することを考えている。
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