2021 Fiscal Year Research-status Report
日本語母語話者を教える韓国語教員のための文法ハンドブック作成
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21K00539
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
金 智英 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 准教授 (80838798)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 韓国語学習 / 韓国語教育 / 日韓対照言語学 / 誤用分析 / 連結語尾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日韓対照言語学などの分野で行われている研究を、日本における韓国語教育の現場で有効に活用できるように解説し、必要情報を調整・再整理して提供するハンドブックの作成である。それには、大まかにまとめると、文法現象の設定、関連する先行研究の整理、韓国語教育の現場での活用と検証といった作業が必要である。 2021年度は、連結語尾やアスペクトを中心とした作業に取り掛かった。作業内容は、先行研究の結果を総合しながら考察を行い、連結語尾「ko」と「se」と日本語の「テ」形の対照結果を整理し、それが日本語母語話者の韓国語学習にどのように影響しているのかを推察し、効果的な学習展開をまとめた。作文資料は公開コーパスとこれまで研究代表者本人が収集してきた作文資料を用いた。教員へのインタビューは一旦保留し、関連する先行研究を十分に調べ、当該項目(連結語尾)の学習における導入と展開の提案を前倒しにした。 連結語尾「ko」と「se」は、韓国語教育において明確な運用基準の提示や例外の解説が難解な文法項目の一つである。その理由として、まず「ko」と「se」が意味機能面において互いに類似しているうえ、共起する用言の属性が複雑に絡み合うことが挙げられる。なお、当該語尾が日本語のテ形の意味機能と重なる部分が多いなか、テ形の持ちうる文脈的な意味そのものを日本語母語話者が内省しにくいことも影響していると考えられる。もう一つ、日韓両言語の母語話者が互いの言語を学習する際に、両言語の類似性に起因する「母語からの負の転移」も重要な要因として影響している。研究では、これらの要因を明らかにし、韓国語教育に活用できる情報を整理した。そして、誤用分析を通して学習者に有効な導入順序を設定し、理論的な根拠を提示しながら段階別学習の展開を提案した。 以上の結果を朝鮮語教育学会で発表し、神戸松蔭女子学院大学研究紀要に投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の調査や整理、学習展開提案ができている。ただ、コロナ禍によってオンライン授業を行っている多くの教員において、授業準備やその他様々な負担が激増していることを勘案し、インタビューを取りやめている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、主に「助詞」を取り上げて予備調査を行う。韓国語初級・中級それぞれの学習者を対象に作文を収集し、誤用の傾向を把握する。また、文法テストやアンケートを実施し、助詞の学習に影響する要因を明らかにしていく。予備調査の結果をまとめた後、教員へのインタビューを行い、助詞を導入する際の内容展開や解説のポイント、添削などの具体的な指導内容について可能な範囲で情報を提供してもらう。その結果をもって、助詞の学習に効果的なアプローチについて考察を行い、指導におけるいくつかの提案と理論的根拠をまとめる。 一方、以上の調査と並行して、2021年度に行った「連結語尾」の研究を継続する。昨年度にまとめた学習展開案を実際の教育に持ち込み、検証する。特に、学生の誤用を正す場面において、本研究が提示してる理論的な解説が有用に働いているかどうか、教員と学習者へのアンケートを行う予定である。なお、昨年度に行えなかったインタビュー内容は、この検証作業の際に行うアンケートの内容を調整することで補完する予定である。 2023年度は、助詞の指導に活用できる展開案や添削指導に参考にできる理論的解説をまとめ、実際の授業に取り入れて検証する。前年度同様、学生や教員へのアンケートを通して、その有用性を確認する予定である。 これらの調査や検証を終え、2023年度の後半には、連結語尾やアスペクト(テイル)表現、助詞といった項目を中心にまとめた文法指導ハンドブックを完成する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の322,316円は、デスクトップ型のパソコンを当初の計画より低価のものにしたこと、購入を予定していた韓国語対応のスキャナーや韓国語関連の書籍が購入できなかったこと(韓国への渡航が困難なため)による物品費の未支出、コロナ禍によるインタビュー調査の取り止め、学会への参加がオンラインだったことによる旅費の未支出がその理由である。 2022年度の予算の使用用途は、物品費として調査の際に持ち運び可能なノートパソコンの購入、韓国語が読み取り可能なスキャナーの購入、書籍の購入などに30万円程度を想定し、計上している。また、学習展開テキストの試験版(冊子)の作成と製本、郵送に25万円程度、調査協力者(教員)への謝金やデーター入力に約15万円、協力教員の担当する韓国語の授業で行う予定の実施調査やインタビュー調査、学会発表のための旅費に10万円程度をそれぞれ想定し、計上している。
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Research Products
(2 results)