2021 Fiscal Year Research-status Report
Interactions between clausal arguments in Odia reflected in case marking
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21K00540
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山部 順治 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (00330598)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オリヤ語(オディア語) / オリッサ州(オディシャ州) / 統語論 / 人称・格制約 / 同一格制約 / 節縮約 / コピュラ文 / 九州方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
諸言語において、多項文の格体制は項どうし間の相対的関係に左右されることがある。オリヤ語(インド東部・オリッサ州で話される印欧語)においては、そのような事象が多様に見られる。本研究は、オリヤ語のそれら事象の研究をとおして、またオリヤ語と日本語の対照をとおして、格標示、異化的な作用、名詞句階層などの統語的概念に関して通言語的多様性・普遍性の解明へ寄与をねらう。 本年度(令和3年度)の研究実績は、次のようである。 (1)オリヤ語に関しては、現地インド・オリッサ州での資料収集調査が上記目的ために不可欠であるが、これは本年度(令和3年度)実施できなかった。それに替え、令和1年度までの現地調査で得ていた資料を整理し、理論的に考察することに専心した。令和4年度実施予定の現地調査で使用する質問項目を整備した。主に、格、人称、節縮約、類別詞、有生性、コピュラ動詞が関わる事象を取り上げた。 オリヤ語に関する成果発表は、論文1件、学会発表1件。前者では、人称・格制約に関し、その適用範囲について話者間に見られる変異を報告した。後者では、同一格制約(同一文中で同一格名詞句の共起が排除される事象)に関し、オリヤ語の類型的特異点を明らかにした― 日本語を含む世界の諸言語における事例では、排除される対象(名詞句)の特徴が関与的であるのに対し、オリヤ語の事例では、排除する場所(統語的文脈)の特徴が問題となる。 (2)日本語に関しては、標準語と中国・九州地方の若年層方言における文法・音声事象について、前年度までに得られた資料を整理するとともに、面接・アンケート・インターネット検索によって資料収集を行った。これら資料に基づき理論的考察を行った。 日本語に関する成果発表は、論文1件。言語学の入門授業で長年継続してきたアンケート調査の蓄積をもとに、新規の混成語に適用されるアクセント規則とその話者間変異を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を進捗するためにはインド・オリッサ州での資料収集調査が不可欠であるが、本年度(令和3年度)には、コロナ禍で渡航制限が解除されず、同調査を実施できなかった。それに替え、令和1年度までの現地調査で得ていた資料を整理し、理論的に考察することに専心した。この成果を、論文1件、学会発表1件として発表した。令和4年度実施予定の現地調査で使用する質問項目を整備した。 日本語に関する研究としては、これまでの調査結果を整理し、これによって論文1件を発表した。また、面接・アンケート・ウェブ検索によって資料収集・考察を行なった。勤務地が変わったことにともない、九州方言の調査に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度には、インド・オリッサ州で調査が実施できる見込みである。カタック市では旧知の協力者から、ウトカル大学(ブバネスワル市)では2・3人の学生から、それぞれ3週間の期間毎日、聞き取りを行なう。これらでは、令和3年度に用意した質問から開始し、質問に対して得られる回答に応じて新たに質問を設定していく。 勤務校(熊本市)においては、インドでの調査で得られたオリヤ語についての資料を整理・考察する。このほか、日本語の標準語や九州方言の構造的側面について対面・アンケートによって資料を収集する。この資料を前任地(岡山市)で得た資料と対照し、両方言の異同を浮き彫りにする。
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Causes of Carryover |
本研究は、インド・オリッサ州で行なう資料収集調査を中核としており、経費は主にその実施のために使用することとしている。しかし、本年度(令和3年度)は、コロナ禍の渡航制限が解除されず、この調査ができなかった。 令和4年度にはこの調査を実施できる見込みであり、経費の大部分はそれの旅費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)