2021 Fiscal Year Research-status Report
宮城県に残存する江戸期から明治期における方言資料の発掘調査,および資料論的研究
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21K00542
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
作田 将三郎 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (30566021)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地方語文献 / 道中記 / 資料論的考察 / 地方語史 / 方言的特徴 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、年間を通じて新型コロナウイルス感染症拡大予防に関する対策や配慮として県をまたぐ移動を控えることが求められ、研究を目的とした出張の立案や申請が容易ではなかった。そのため、令和3年度の研究計画のメインテーマであった宮城県内各市町村の図書館や博物館における資料発掘調査、資料の閲覧、および撮影や複写といった文献資料の確認や採取、資料論的検討、さらにはデータの質的・量的検討といった作業の実施が困難であると判断し、当初予定していた研究計画を実施することができなかった。 そこで、上記に示した研究計画として立案していた当初の予定を変更し、令和3年度は申請時以前に入手していた仙台藩刈田郡白石(現在の宮城県白石市、県南部地域)の商人である渡辺甚蔵が天保10(1939)年に記し、弘化3(1846)年に完成させた『道中記』についての資料論的検討、さらにはデータの質的・量的検討を行い、方言的特徴を反映している地方語文献としての価値づけについて考察する研究を行った。 考察の結果、資料に反映されている方言的特徴として、「おもへ出し」(思い出し)や「集へて」(集いて)、「思ひ共」(思えども)や「かぞいかたし」(数え難し)のような、現代の方言音声としても使用されている「イとエの混同」と思われる用例を確認することができた。この音声の方言的特徴は、『道中記』と作成時期や作成地が同じである仙台藩刈田郡白石で作成された資料、さらには隣接地域で作成された資料においても用例が確認されている。より詳細な検討を加える必要があるものの、『道中記』は資料作成当時である近世後期の方言、特に庶民層が使用していた音声上の特徴や使用状況を把握するために、さらには過去の音声を探るために有効な地方語文献資料となり得る可能性が高いことを明らかにした。 現在は、上記の考察結果をまとめ、論文化しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度は、本研究申請時における勤務校から本務校へと転出したため、新たに本務校で行う授業の準備や学内業務などに時間がとられ、タイムマネージメントがうまくいかず、当初設定していたエフォートを確保することができなかった。 また、新型コロナウイルス感染症拡大予防に関する対策や配慮が求められたことにより、予定していた宮城県内各市町村の図書館や博物館における資料の閲覧、および撮影や複写といった文献資料の確認や採取ができなかった。 そのため、研究計画を変更し、事前に入手していた資料1種に関する資料論的考察、および採取用例の分析などを行うことで対応したものの、現在までの研究作業に関する進捗状況は立案していた研究計画より遅れており、想定していた研究成果をあげることはできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度における研究作業の遅れを取り戻し、令和4年度の研究を滞りなく推進させていくために、調査対象を当初予定していた宮城県全域の図書館や博物館から資料の所在が判明している宮城県立図書館や仙台市立図書館へと変更する。そして、宮城県立図書館所蔵25種と仙台市立図書館資料所蔵8種の資料を閲覧し、資料内に方言的特徴が反映されているかの確認作業を行い、方言が反映されている資料の撮影や複写に努めていきたい。 その作業が終わり次第、方言的特徴を反映している地方語文献として価値づけのために資料論的検討を行い、得られた用例が必要なデータとして使用できるかすどうかを質的・量的な観点から具体的に検討を行うという計画を立てている。なお、これらが遂行されれば、本年度中頃あたりには研究計画の遅れを取り戻すことができるものと思われる。 得られた研究成果については、令和4年度の研究計画として設定していたとおり、所属学会での発表、学術論文の執筆、および学会誌への投稿へと発展させていく予定である。
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Causes of Carryover |
年間を通じて新型コロナウイルス感染症拡大予防に関する対策や配慮として県をまたぐ移動を控えることが求められ、当初予定していた文献資料の調査、および閲覧を実施することができなかった。そのため、文献資料の調査として計上した旅費、文献資料の調査の結果から得られた方言的特徴が反映された資料の撮影や印刷、および分析の際に必要となる方言に関する書籍類として計上していた物品費などを執行することができなかった。 本年度は前年度実施することができなかった文献調査については、8月から9月にかけて複数回行う予定でおり、それが遂行されれば、資料論的検討やデータの質的・量的検討といった作業へと進められる。そのため、本年度は文献資料の調査として計上した旅費、およびデータの質的・量的検討の必要な書籍購入のための物品費として執行する予定である。
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