2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K00570
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
松山 哲也 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90315739)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 指定的疑似分裂文 / 非規範的主語構文 / 削除分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、Chomsky (2013、2015)のラベル付け計算法に違反するような非規範的主語構文がCitko et al (2018)が提唱する分離素性継承を援用することで首尾一貫した説明が可能であることを示すことであった。本年度は、この目的を果たす上で英語の指定的疑似分裂文(What John saw was himself)に取り組んだ。この構文のコピュラ後の要素が主語であるにも関わらずコピュラと数の一致を示さないことに着目し(What you have bought is fake jewels. (Declerck 1988: 80))、この特性に分離素性継承からの説明を試みた。しかし、この説明には経験的・理論的不備があることが判明した。代案として、ラベル付け理論をもとに、指定的疑似分裂文の分析を行った。具体的には、派生の根底においてコピュラ後の要素とwh節が主述関係(小節)を形成し、wh節が話題としてTopPの指定部に内的併合し、コピュラ後の要素が焦点として動詞句の指定部に内的併合すると分析した。この分析が、Den Dikken et al (2000)の削除分析の不備を解消し、当構文の重要な特徴に自然な説明を与えることを示した。本研究の成果として「ラベル付け理論による指定的疑似分裂文の分析」(『日本英語英文学研究』33号p.89-117))に論考をまとめて、社会に還元することができた。 本研究は、期間全体を通じて、英語の非規範的主語構文(主語接触関係節構文、because節主語構文、指定的疑似分裂文)の分析に一貫して取り組んだ。だだし、各構文の特異性は、分離素性継承を援用するだけでは説明することが難しく、冒頭で示した研究目的をラベル付け理論内で微修正しながら研究を進めることになった。その意味では、本研究は、分離素性継承よりはラベル付け理論に貢献したと考えられる。
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