2022 Fiscal Year Research-status Report
Diachronic Change of English Relativizers and Its Syntactic Effects
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21K00584
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
縄田 裕幸 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (00325036)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 関係代名詞 / 生成統語論 / 英語史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、英語史におけるwh関係節の出現と接触節の出現について、前年度に行ったコーパス調査の結果を踏まえて分析を行った。 まずwh関係節の出現については、先行研究で提唱された自由関係節由来説を批判的に検討し、英語の先行詞付wh関係節は独立which節を主たる起源とし、自由関係節が変化の触媒となった多重起源構文であることを明らかにした。また支持詞を関係詞とするDシステムからwhシステムへの移行の引き金となったのが指示詞の屈折の衰退ではなくその指示機能の低下であるとすることで、指示詞se/seo/thatの衰退とwho(m)/whichの発達の間にかなりの時間差があったことや、whichがwho(m)よりも早く発達したこと、さらに非制限wh関係節が制限的wh関係節よりも早く発達したことを説明した。 またwh関係節よりも後に生じた接触節の出現については、接触節の構造がR(elative)-TopPであると提案した。英語で接触節が出現した15世紀中頃は、主節でV2語順が衰退した時期と重なる。この同時性を捉えるために、本研究では動詞屈折接辞の衰退に伴って下位TopPが不活性化されたと提案した。この不活性化は主節では下位TopPの消失につながり、関係節ではTopPからR-TopPへの機能変化として現れた。これにより「DP-主語-動詞」の語順を話題化文としてだけでなく接触節を含む名詞句として分析する可能性がひらけたと論じた。 非制限wh関係節から埋め込み型非制限wh関係節を経由して制限wh関係節へ、そして最終的にゼロ関係節へと発達するにつれて、節の範疇はSAPからCP、そしてR-TopPへと徐々にサイズが小さくなっている。したがって上記の英語関係節の一連の変化は、節のサイズが縮小しつつ被修飾要素に組み込まれていく過程として捉えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたwh関係節の発達に関する分析に加えて、昨年度実施できなかった接触節の分析も実施することができ、おおむね順調に進んでいると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画最終年度にあたる令和5年度は、英語関係節のDシステムからwhシステムへの移行に果たしたthat関係節の役割について理論的な分析を行う。that関係節は初期中英語における制限関係節の圧倒的多数を占めていたにもかかわらず、その発達についてこれまで十分な検討が行われていないため、本研究において重要な位置を占める。Dシステム、whシステム、接触節に加えてthat関係節を考察することで、英語関係節の全体像を提示する。また、そこから得られた理論的知見を通言語的に検証すすることで、提案した分析の妥当性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会や研究会が軒並みオンライン開催となったため、調査研究旅費や成果発表旅費が未使用のまま残った。今年度の旅費は次年度の図書費として有効に活用し,今年度実施できなかった文献調査を充実させたい。
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