2021 Fiscal Year Research-status Report
A Syntax-semantics Mismatch
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21K00587
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
廣江 顕 長崎大学, 言語教育研究センター, 教授 (20369119)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | mismatch / ASC / Parallel Structure |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度では、統語構造と意味構造のミスマッチが生じている事例として「副詞節主語(adverbial sentential clause: ASC)」を取り上げ分析を行った。データ分析の結果、一見すると、ASCは統語部門でDPとして振る舞っているように考えられるものの、詳細に観察してみると、必ずしもそうではないデータが存在することが明らかになった。 また、ASCのようなミスマッチ事例を分析する際に、論理的には2つのアプローチがあるとの立場で考察を行った。ひとつはミスマッチを認めない、統語部門にもDP構造が投射されていると仮定する分析、もうひとつは意味部門(概念意味構造)でDPとして認可されているとする分析で、それぞれの分析の妥当性を理論的・経験的に検証を行った。 以上の研究の結果、ASCは意味部門で認可されているとの結論に至った。これまでの研究の意義としては、言語には表示レベル間のミスマッチというものが存在し、文法がミスマッチをどのような仕方で解決するのか(あるいはしないのか)という、より大きな問題との関連で捉える方向が開けたと言える。その一方で、ASCのような現象をどういった文法モデルで説明するのがより良い説明かという疑問も生じ、現時点ではJackendoff(1997, 2005)で提唱されている「三部門並列モデル(Tripartite Parallel Structure)」の枠組みに埋め込むとの方向で研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度(研究)初年度で行ってきた研究で、「副詞節主語(adverbial sentential clause: ASC)」の文法範疇を考察・決定する過程において、ASCは自由関係詞節なのか、あるいは関係節ではあるものの先行詞が省略されている特殊な事例なのか、という新しい課題が浮き彫りになった。その意味で、類似した事例間の構造・意味関係を明らかにするという、極めて独創的な研究への門戸が開いたと言える。 一方で、類型論的な考察から、英語だけの特殊な事例だということも明らかになり、なぜ英語にそのようなミスマッチがあるのかという問題への地平も開けた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、研究計画通りに、令和4年度は「文主語(sentential subject: SS)」をミスマッチ事例として取り上げ、令和3年度に実施した研究と同じ分析を行ないながら、最終的には、SSは統語部門ではCPだが意味(概念意味構造)部門ではDPになっているとの主張を行ない、ASCと同様に意味部門で認可されているとの提案を行う予定である。 その一方で、研究初年度に新たに生じたASCは自由関係節かあるいは先行詞が省略された特殊な事例かを、新たな事実を発掘しながら考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、研究目的であっても出張が制限されていた。そこで、令和4年度では、令和3年度の未使用分を学会・研究会等への出張費及び国際ジャーナルへの投稿料として使用する。
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Research Products
(4 results)