2021 Fiscal Year Research-status Report

日本語指導が必要な児童の音声の課題に基づく効果的な音声指導とそのための教材の開発

Research Project

Project/Area Number	21K00596
Research Institution	Yokohama National University
Principal Investigator	河野俊之横浜国立大学, 教育学部, 教授 (60269769)
Project Period (FY)	2021-04-01 – 2025-03-31
Keywords	日本語指導が必要な児童 / 音声 / 産出 / 知覚 / 教材
Outline of Annual Research Achievements	本研究は、以下を目的とする。日本語指導が必要な児童（以下、CLD児）の音声及びその習得に関する課題について，１）まず，単音，特殊拍，アクセント，イントネーションの実態を明らかにする。２）その知見に基づき，従来の指導方法や教材を参考にしながら，効果的な指導方法を設計する。３）設計した指導方法の検証を行い，改善し，それをより効果的にする教材を作成する。４）それらを教師養成，教師研修に取り入れる。しかし、今年度は、コロナ禍のため、データ収集が十分に行えなかった。そのため、先行研究や過去に行った観察、非公式のインタビューや過去に行われたDLA（Dialogic Language Assessment：対話型アセスメント）を元に、CLD児の音声の課題を抽出した。課題として、「ツ」「有声－無声」等の単音・長音・促音・撥音・アクセント・文末イントネーション・文全体のイントネーション・ポーズを抽出した。「ツ」などの単音は成人日本語非母語話者にも見られ、また、日本語母語話者でも低学年では若干見られるが、CLD児の場合も来日直後には現れることもある。長音・促音についても同じ傾向があるが、CLD児の場合、正しく産出できていても、書く際には、長音・促音が抜けていることが多いことが分かった。また、アクセントについては、成人日本語非母語話者と違い、既知語についてはアクセントの誤りが少ないことが分かった。しかし、その一方で、日本語母語話者と違い、新出語についてはアクセントの誤りが多いことが分かった。それらの知見に基づき、「ツ」「有声－無声」等の単音・長音・促音・撥音・アクセント・文末イントネーション・文全体のイントネーション・ポーズを学習するための教材をデザインした。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason CLD児の音声の課題については、来日１年後ぐらいまでが特に大きな課題となると考えられるが、コロナ禍の現在、新しく来日する児童は非常に少なく、また、学校現場では、密を避けるために部外者である研究者を研究のために受け入れることが難しい状況である。そこで、過去に行った観察、非公式のインタビューや過去に行われたDLAを元に、CLD児の音声の課題を抽出した。しかし、そのデータは質・量ともに必ずしも十分ではなく、また、音声的な偏りもある。また、本研究では、産出のみならず、知覚についての課題を明らかにし、その教育についても扱うことにしているが、知覚については調査できていない。
Strategy for Future Research Activity	2022年度は、コロナ禍も若干、収まり、学校現場での研究が可能になってきているので、研究が進むと期待している。 CLD児の音声の知覚の誤用については，CLD児が誤りやすい単語の読み上げ資料を作成し，それを聞かせ，平仮名・片仮名で記述させる。読み上げ資料には「コップ」等の有意味語だけでなく，「ケッピ」等の無意味語も含めることで，語彙知識がない単語であっても，音声のみで知覚できるかを調査する。また、CLD児の音声を収集する。これらにより，CLD児の音声の知覚の課題を明らかにし，母語や来日年齢，在日期間の影響を明らかにする。また、CLD児のDLAの結果などを参考に，語彙力を測り、CLD児の音声の知覚と語彙力の関係を明らかにする。上の調査・研究から得られた知見に基づき，効果的な指導方法を設計する。また，設計した指導方法の検証を行い，改善し，それをより効果的にする教材を試作する。
Causes of Carryover	コロナ禍の影響で、学校現場での調査が十分にできず、謝金等の支出が減ったため。次年度は、学校現場での調査ができると考えている。