2023 Fiscal Year Research-status Report
外国籍の子どもと保育者をつなぐ日本語コミュニケーション支援教材の開発
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21K00601
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
柏 まり 佛教大学, 教育学部, 教授 (30373145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 和順 佛教大学, 教育学部, 教授 (10413436)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 外国籍 / 日本語コミュニケーション / 支援教材 / ICT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,わが国で暮らすすべての子どもの健全な育ちを支える教育・保育の質的保障を目指し,日本語に課題を持つ外国籍の子どもと保育者をつなぐ日本語コミュニケーション支援教材を開発するとともに,教材のICT化を図るものである。 本年度は,外国籍の子どもの保育に関する課題を踏まえ,単なる翻訳ツールとしてではなく,保育実践に有用となる日本語コミュニケーション支援教材の開発と試作した支援教材について検討を試みた。 具体的には,保育実践に求められる日本語コミュニケーション支援教材として想定された5つのカテゴリーである,①外国籍の子どもの感情理解,②生活習慣に関する行動理解,③集団生活場面に求められる行動理解,④子ども同士の関係構築に求められる行動・感情理解,⑤保育で使用する場所・物に関する理解,を手がかりとして,実際の保育に用いられる道具,場所,生活場面から想定される事象に関する言葉を抽出し,絵と音声を対応させた視覚的支援教材の試作を試みた。さらに,子どもと保育者とのコミュニケーション支援の可能性について,外国籍の子どもの保育を担当する保育者よりヒアリング調査を実施した。これまで用いていた「絵カード」と比較すると,イラストと音声が対応することで子どもとのコミュニケーションがスムーズになることが確認され,音声ソフトだけではなくイラストと対応する支援教材のICT化の必要性が示唆された。しかし,多言語に対応することの難しさもあり,支援教材のICT化の難しさが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画段階では、本年度の研究目的としていた日本語コミュニケーション支援教材とした絵カードを発展させ,音声を付加した支援教材の試作を行い,その可能性について,実際に外国籍の子どもを保育する保育者からのヒアリング調査を実施し,支援教材の可能性について検討することができた。 しかし,研究協力施設の保育者に協力を得ながら研究を進める中で,保育実践に有用となる教材開発を行う上での課題も明らかになった。具体的には,実際に必要とされる言葉は多言語であるため,絵カードと音声ソフトのICT化を進めるうえで困難が生じている。 また,乳幼児期の保育においては保護者の理解や支援が不可欠であることが保育者のヒアリングからも明らかとなり,日本語コミュニケーション支援教材は,子どもだけでなく保護者支援においても必要であることがあるため,保護者対応を視野にいれた研究が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,外国籍の子どもと実際に関わっている保育現場の保育者のヒアリングを行い,年齢によって必要とされる言葉に着目し,子どもの成長発達に合わせた教材について検討する。加えて,保育で必要となる言葉は多岐にわたるため,今後は5つのカテゴリーに関する精査を進めていくことが不可欠となる。今回の調査において,乳幼児期の保育においては保護者の理解や支援が不可欠であることが示唆された。実際に日本語コミュニケーションに困難を感じている保護者からのヒアリングを行い,保護者支援の現状や課題を明らかにするとともに,日本語コミュニケーション支援教材を活用した保護者支援の可能性を探ることとする。研究最終年度として,日本語コミュニケーション支援教材を作成するとともに,研究成果の取りまとめを行い,報告書を作成することで広く公表できるように努める。
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Causes of Carryover |
本年度は,研究計画書において予定していた研究先進国への調査を見合わせたため,次年度使用額が生じる結果となった。今年度は,コロナ感染も落ち着き,我が国においても5類相当に移行されたことから,外国への調査の実施が可能と考える。今後は,調査スケジュールを立て,共同研究者と協力しながら先進国での調査研究を進め,速やかに研究結果の取りまとめを行う予定である。また,本年度,検討課題が残った日本語コミュニケーション支援教材のICT化の試作について精査し,教材開発を行うことが必要となる。
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