2021 Fiscal Year Research-status Report
付随的語彙学習を可能にするオンライン多読ライブラリーの拡充と実践による効果の検証
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21K00605
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中野 てい子 東洋大学, 国際教育センター, 講師 (20635932)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多読 / 電子書籍 / 自律学習 / e-learning / 付随的語彙学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、次の3つのアプローチによって多読支援システムの構築を目指している。 1.付随的語彙学習を可能にする多読ライブラリーの拡充 2.語彙学習の効果を高める語彙練習サイトの構築 3.多読教材を使った付随的語彙学習の効果の調査 令和3年度は、上記の1の多読ライブラリーの拡充を目的として、研究の土台となる多読教材「JGRさくら」の作成を行った。多読教材のリライトの元になるテキストには、青空文庫で公開されている著作権のなくなった小説を使用している。多読教材の制作作業の工程では、まず、リライトの著者が原作を「JGR語彙チェッカー(申請者が作成)」にかけて、どのレベルにリライトするかを決める。そして、該当レベルの語彙でリライトし、語彙チェッカーにかけるという作業を繰り返す。語彙調整ができた原稿を母語話者日本語教師が試読し、内容をチェックする。その後、日本語学習者に読んでもらい、問題がないかチェックする。この工程を経た後、イラストレーターに挿絵を依頼する。また、作業者に依頼して、ルビをつける。これらを業者に入稿し、編集と電子書籍化を依頼する。リライトの著者が、電子書籍化した最終原稿のチェックを行い、完成品となる。以上のほかに、上記3の付随的語彙学習の効果の調査の準備を行った。この調査では、「JGRさくら」を使って体系的な語彙学習を行うために必要な条件と、その学習効果を、量的分析と質的分析の両面から明らかにすることを目的とするため、この調査結果を上記2の語彙学習の効果を高める語彙練習サイトに応用することも視野に入れて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の計画は、ライブラリー拡充の準備を行うことである。そこで、以下の作業を行なった。 (1) 多読教材の執筆をJapanese Graded Reader Project Group に委託し、「青空文庫」等に公開されている15の作品のリライトを行なった。この最終原稿の試読を、教師と学習者の両方の面から行ない、語彙レベルを決定した。 (2)挿絵をイラストレーターに依頼し、14作品のイラスト56枚が完成した。 (3) ルビ入れと校正を作業者に依頼した。ルビ入れと校正が済んだ原稿を電子書籍化業者に入稿した。 上記の他、多読授業で試作した教材やコーパスを元に、付随的語彙学習の効果の検証方法を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年の続きとして、新たに9作品のリライトを委託し、順次作業を進め、合計24の作品の電子書籍化準備を行う。 令和4年度の計画としては、多読教材の電子書籍化を業者に委託し、完成した電子書籍「JGRさくら」を「さくら多読ラボ」で公開する。 令和5年度に予定している学会発表の準備としては、申請者が開講している授業において、「さくら多読ラボ」と「多読のための語彙レベルテスト」を用いた調査を行う。また、「JGRさくら」を使って体系的な語彙学習を行うために必要な条件等をコーパス分析によって明らかにする。このように、「JGRさくら」を使い、体系的な語彙学習を行うために必要な条件と学習効果を、量的分析と質的分析の両面から明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
リライトした多読教材を電子書籍化業者に入稿する前にルビ入れ作業が必要である。この作業には、日本語教育の知識と経験が必要であるため、2015年から同じ方に作業をお願いしている。今回は作品数が多いため、数ヶ月間継続してこの作業に専念する必要がある。作業者の都合を伺ったところ、5月から11月の間しか時間が取れないということだったため、日程が合わず今年度中に行えなかった。そのため、リライト作業者の作業は終わっているが、謝礼の支払いに至らなかった。また、電子書籍化業者への支払いが、次年度に繰り越された。次年度の計画に関しては、作業者と電子書籍化業者に確認済みである。ルビ入れ作業が終わり次第、業者に入稿し、支払いを行う。
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