2022 Fiscal Year Research-status Report
付随的語彙学習を可能にするオンライン多読ライブラリーの拡充と実践による効果の検証
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21K00605
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中野 てい子 東洋大学, 国際教育センター, 講師 (20635932)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多読 / 自律学習 / eラーニング / 付随的語彙学習 / 付随的文法学習 / 品詞情報 / 電子書籍 / 文章理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、次の3つのアプローチによって多読支援システムの構築を目指している。 1.付随的語彙学習を可能にする多読ライブラリーの拡充 2.語彙学習の効果を高める語彙練習サイトの構築 3.多読教材を使った付随的語彙学習の効果の調査 多読教材を使った付随的語彙学習では、レベルごとに一定の量を読むことによって、そのレベルの未知語との遭遇回数が増え、体系的に語彙を学習できると考えられている。本研究で開発している日本語多読教材「JGRさくら」は、付随的語彙学習が可能になるよう、各レベルにおいて語彙の95%が既知語になる語彙調整が行われている。また、青空文庫に公開されている文学小説を易しい日本語にリライトしているため、初級・中級レベルの日本語学習者が日本語で文学小説を読むことが可能になる。令和3年度から令和4年度にかけて、多読ライブラリーを拡充するため(上記1)、青空文庫から新たに22冊の作品を多読教材用にリライトして電子書籍化した。これによって、「さくら多読ラボ」全体の作品数は、46冊(約36万字)となり、初級前半から中級前半のレベルでは、各レベルで最低5冊以上の多読が可能になった。また、協力者は少ないが、付随的語彙学習の効果を調査するため(上記3)、多読のための語彙レベルテストの調査を引き続き行なった。この調査結果を語彙学習の効果を高める語彙練習サイト(上記2)に応用することも視野に入れて検討した。これらの他、コロナ禍でオンライン授業のために作成した、品詞情報付き日本語多読教材の学習効果を調査し、結果を「早稲田日本語教育学」に投稿した。さらに、初学者と初級学習者を対象として学習効果の比較を行い、英文オンラインジャーナルに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多読ライブラリーの拡充では、令和3年度に行う予定であった多読教材の制作作業が、作業者の都合によって遅れたため、電子書籍の完成時期が令和5年になった。作品の最終的なレベルが決まり、レベルごとの作品の総字数から、作品が不足しているレベル等の今後の課題が明らかになった。 付随的語彙学習の効果の調査では、多読教材を使って体系的な語彙学習を行うために必要な条件と、その学習効果を、教材のコーパス分析と学習者を対象とした学習効果の分析の両面から明らかにすることを目的としている。教材の制作が遅れたことによって、コーパス分析が遅れている。また、コロナ禍で留学生の数が通常より少なく、十分な数の協力者が得られなかったため、学習効果の分析に至っていない。 一方で、令和4年度は、アプローチ2としてオンライン授業のために作成した、品詞情報付き多読教材の学習効果を調査した。その結果、品詞情報付きの多読教材が学習者の文章理解を助け、「読み」の良い循環に有用であることが示された。また、多読による付随的文法学習の可能性が示唆された。さらに、初学者と初級学習者を対象として行なった調査の結果から、初学者向けのレベルの多読教材の必要性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
完成した電子書籍「JGRさくら」を「さくら多読ラボ」で公開し、学会発表を行う(8月)。 春学期に、「多読のための語彙レベルテスト」の調査を引き続き行う。同時に、「JGRさくら」のコーパス分析を行い、語や共起表現の出現頻度を分析する。「JGRさくら」を使って開講している授業において、体系的な語彙学習を行うために必要な条件と学習効果の関係を、量的分析と質的分析の両面から明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度にルビ入れ作業が遅れたことにより、電子書籍の完成時期が令和4年度の年度末になった。そのため、業者の都合により、令和5年度に支払うことになった。
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Remarks |
(1)のライブラリーにおいて、日本語多読教材の電子書籍を公開している。 (2)は、利用者の日本語レベルに適した多読教材のレベルを判定する。 (3)は、文章中の単語の数を数えるツールである。製作者が青空文庫等の作品を多読教材用にリライトする際、語彙調整に使用している。
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