2021 Fiscal Year Research-status Report
Inpact of Japanese pop culture over Japanese-language education in Korea
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21K00606
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
河先 俊子 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (60386927)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 寛 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (40338299)
呉 正培 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (60510568)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 韓国の日本語教育 / 教科書分析 / 批判的談話分析 / 国際文化交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本大衆文化開放後、現在までの間に韓国で発行された高等学校の教育課程(第7次・2007改定・2009改定・2015改定)および高等学校の日本語の教科書48冊を収集し、そこに日本語教育の必要性と日本文化に関するどのような認識が示されているのか明らかにした。これらの認識は日韓関係をはじめとする社会的な文脈の変化を織り込みながら生成されているため、社会的文脈と言説との相互作用に照準することができる批判的談話分析を用いて分析を行った。また、教育課程に関しては日本語教育の特徴を明確化するため、適宜他の外国語と比較した。 教育課程の分析の結果、日韓の人的・文化的交流が継続して日本語教育の必要性の論拠とされており、より強調されるようになったことが分かった。また、文化はコミュニケーション能力の育成、世界市民意識の涵養と結び付けられ、学習内容としていっそう重視されるようになっており、日本語のみ大衆文化が文化の内容として挙げられていた。 しかし、大衆文化を取り上げていたのは48冊のうち20冊の教科書だけであり、主に漫画・アニメ産業の発達が記述されていた。これに対してほとんど全ての教科書で取り上げられていたのは、年中行事、祭、高校生活、着物、食べ物、住居、観光名所、公共交通、食事のマナー、訪問時のマナー、婉曲的な断りをはじめとする日本人の言語行動であった。日本文化について韓国語で書かれた部分の発話行為はほとんどが陳述であったが、マナーや言語行動を内容とする場合、「~方がいい」「~しなければならない」のように要求や義務の発話行為が見られた。さらに、日本文化は概ね肯定的な評価を伴って記述されており、歴史や国家間関係にはほとんど触れられていなかった。教科書においても日本人と韓国人との交流が重視され、日本人のコミュニケーションの型に韓国人が合わせることが志向されていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、2000年以降現在まで韓国で発行された高等学校の教育課程および高等学校の日本語の教科書の収集と分析を終えた。しかし、コロナウイルスの影響で渡韓できなかったため、日本語教育に関するその他の刊行物の収集と聞き取り調査は若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究の結果、高等学校の日本語の教育課程において大衆文化が文化の内容の一つとされたものの、それを内容に含めている教科書はそれほど多くないことが分かった。教科書という媒体の性質上、日本の大衆文化を内容として取り込むことが難しかったと考えられる。一方で、日本人との円滑なコミュニケーションと交流への志向性は強く表れていた。 今年度は、当該年度の研究成果を踏まえて、高校および大学で日本語教育に携わる教員を対象としてインタビュー調査を行い、日本大衆文化開放とその日本語教育への影響に対する考え、日本語のクラスで実際にどのように大衆文化を扱っているかなどを尋ねる予定であり、現在、インタビューガイドを作成している。インタビューで得られたデータは、教育課程の内容がマスターナラティブとなっている可能性も含め、批判的談話分析を用いて分析する。インタビューは渡韓して対面で行う予定であるが、コロナウイルスの影響で渡航が難しい場合は、オンラインで行う。その場合、協力者数が減少する可能性が高いが、インタビューの質が落ちないように留意したい。 日本語教育に携わる教員に対するインタビューと並行して、日本語学習者に対するインタビュー調査の準備も進める。その際、日本大衆文化のファンである人とそうでない人の違い、日本大衆文化の受容が日本語使用や日本人とのコミュニケーションにどう関係しているかなどを明らかにできるようにインタビュー計画を立てる。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で渡韓および国内移動できなかったため、旅費が使用できず、また渡韓に合わせて購入しようと考えていたパソコンを購入しなかったため、今年度の予算が大幅に残った。今年度はインタビューのために渡韓する予定であり、韓国で研究会も実施したいと考えている。残金はその旅費およびパソコンの購入のために使用する予定である。
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Research Products
(1 results)