2022 Fiscal Year Research-status Report
在日中国人長期滞在者における文化変容方略の選択-言語管理理論による検討
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21K00613
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
趙 師哲 山口大学, 教育・学生支援機構, 助教 (90783366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 共子 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (40227153)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超越志向 / 文化変容方略 / 在日中国人 / 日本語能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
「R4年度研究の具体的内容」まず、これまでの面接調査から、日本に暮らす中国出身長期滞在者は、中国人や日本人といった既存のカテゴリを越えたい意欲が見られた。面接調査の結果に基づいて、このような態度を「超越志向」と命名した。また、「中国人であることを捨てていない」、「中国をクリティカルにみることができるようになった」、「移住先の社会の振る舞いや規則を理解し、それにあわせた振る舞いができるようになった」、「移住先の悪いところもみえてきた」、「狭義の超越志向」5つの下位尺度が含まれた45項目を作成した。次に、尺度の信頼性と妥当性を検証するため、日本における中国出身長期滞在者300名に、2回に渡って質問紙調査に協力してもらった。その後、探索的因子分析及び確認的因子分析を行い、尺度の信頼性と妥当性が問題ないと分かった。更に、超越志向と言語能力、文化変容方略との関係を分析した。
「R4年度研究の意義と重要性」このシリーズ研究では、日本にいる中国出身長期滞在者を対象に、彼らのホスト社会との関わりを通して、言語管理が文化変容方略の選択機序を左右するとの仮説を検証する。そのため、彼らがどのようにホスト社会と関わっているのかを把握しないといけない。本年度の重点としては、概念モデルである「文化変容方略」を越えた「超越志向」が具体的にどのようなものかを探究できた。さらに、「超越志向」と日本語能力との関係を確認した。今後の調査では、長期滞在者の心理的適応に対して、超越志向と文化変容方略との交互作用があるかどうかを判明させる。そのため、R5年度で超越志向の中身を確認することが本シリーズ研究の中核となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
300名以上の調査対象者から協力をもらったことによって、尺度の信頼性と妥当性を確認できた。これから、調査結果に基づいて論文執筆をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、初年度研究の継続として、より多くの日本語母語話者を対象としてアンケート調査を行い、外来性を含む日本語使用への評価を集める。次に、上記のコメントを日本に暮らす中国出身長期滞在者に呈示する。質問紙調査の形で、受け取る側の印象としてどの程度嬉しい気分・嫌な気分になったかを尋ねる。また、超越志向、文化変容方略及び主観的ウェルビーイングを評価する質問が含まれる質問紙に回答してもらう。その後、統計分析してから、日本語に対する評価、ホストメンバーとの交流の頻度、超越志向の間をつなぐ心理的な機序を考察する。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額」をアンケート調査の委託費、学会発表の旅費と英文論文の校正で使用する予定である。より大規模のアンケート調査を行うのに、業者を使用する予定がある。そのため委託費が発生する。また、これまでの研究成果を発表するため、学会参加の旅費と英語論文の校正費用が発生する。
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