2021 Fiscal Year Research-status Report
An Elucidation on the Role of Non-Japanese Networks and the Japanese Language in Solving Problems for Non-Japanese Residents in Ibaraki Prefecture
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21K00626
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Research Institution | Tsukuba Gakuin University |
Principal Investigator |
金久保 紀子 筑波学院大学, 経営情報学部, 教授 (50306106)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地域日本語教育 / 定住外国人 / ライフヒストリー / 日本語教育のニーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、茨城県における定住外国人の持つネットワークの質的な把握を通して、定住外国人が直面した日本での生活における課題の解決方法と、解決にあたって日本語が果たした役割を明らかにすることである。 目的をさらに明確化するために、先行研究の調査を行った。2020年に茨城県および茨城県国際交流協会が実施した「地域日本語教育実態調査報告書」によると、茨城県内市町村の教育委員会、市町村が管轄する国際交流協会は、外国人住民の日本語教育に対するニーズを把握できていないことを課題としてあげている。また、定住外国人が実際に日本語を勉強していない(できていない)理由は、「時間がないから」が多く、「日本語ができなくて困ったことがない」という回答も全体の1/3であったと報告されている。 これらの結果から、地域日本語学習を推進したいのは、県や市町村側であり、地域に住んでいる外国人からは県や市町村側が想定しているようなニーズは、もとよりないのではないか、という仮説を設定することができる。さらに、定住外国人にとっての日本語の位置づけを知る必要があると考えられ、本研究の意義が再確認できた。 次にインタビュー調査を行った。インタビュー調査協力者を選定するにあたり、茨城県に定住している外国人の内訳を法務省在留外国人統計より精査し、その様相を反映したインタビュー調査を計画した。現在までに、日本在住3年以上の延べ9名に対して各2時間ほどの調査を実施した。調査は、協力者の主観的な語りを重視するライフストーリーとするため、非構造化インタビューである。 南米日系人の調査からは、家族を重視する姿勢が読み取れ、仕事のために日本語力を高めてきたことがわかった。スリランカ人の調査からは、現在までの主な個人的な課題については、すべて母国にいる母親を中心とした家族とのやりとりで解決していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、調査協力者の選定をしたうえで、年5~6回の調査を実施する予定としていた。茨城県に定住している外国人の内訳を精査した結果から、①中国出身者の割合が日本全体に比して低い、②ブラジル・ペルー、スリランカ・パキスタン出身者の割合が多い、③特定技能・技能実習、日本人の配偶者・定住の在留資格の割合が多いことが明らかとなり、また、協力者の選定にあたっては、10名ほどの候補者から、2~3名の協力者を選定する計画であった。しかしながら、新型コロナウィルス感染症の影響で、対面での面談やインタビュー調査を計画通りに実施することができなかった。また、インタビュー調査は、1回の調査時間が長いことから、協力を得ることが困難な場合が多かった。今年度は、インタビュー調査が進んでいる2名について、その結果を詳細に検討することにした。 インタビューは録音し、Google Documentの自動文字起こし機能を活用して文字化して整理を行い、現在までに、全体の文字化作業の60%が終了しているが、残りの40%はGoogle Documentの自動文字おこし機能の精度の問題もあり、現在も取り組んでいる状況である。 実際の文字化資料の分析にあたっては、ライフストーリーに関する先行研究の分析方法の評価を行っている最中で、分析方法の確定には至っていない。 2021年度はライフストーリーを語ってもらい、今までの生活全体を知ることに徹した。調査協力者との信頼関係に留意しながら、日本での生活・家族との関係、地域や職場での人間関係など多岐にわたる話題についての録音資料を得た。しかし、現在までのところ、日本語や日本人に対する口述が多いとは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はより対面での調査を重視し、各人年5~6回のインタビュー調査を継続する。2021年度複数回のインタビュー調査を行えた2名の協力者に対する調査を続け、さらに異なる背景をもつ調査協力者を2名選定し、インタビュー調査を進める。継続者に対しては、日本語や日本人に対する口述を得ることに留意しつつ、文字化資料を基に、本研究の目的である、定住外国人が持つネットワークの様子を明らかにするために、フォローアップインタビューを実施し、ネットワークの図式化を試みる。 Google Documentの自動文字おこし機能には限界があることを考慮し、録音データの正確な文字化資料作成に重点的に取り組み、資料作成を加速化する。 文字化資料の分析にあたっては、ライフストーリーに関する先行研究の分析方法の評価を引き続き行うとともに、コーディング作業を進める。それにより、共通する課題解決の方法の抽出を可能とする。
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Causes of Carryover |
今年度のインタビュー調査では、協力者の日本語力が高かったことから、通訳者の必要がなかった。次年度も同様と考えられるため、通訳者の謝金計上分を次年度の調査協力者の謝金にあてがい、当初予定の60,000円を、90,000円とする。
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Research Products
(1 results)