2022 Fiscal Year Research-status Report
国際語としての英語と異文化市民教育を統合したELF教育カリキュラムの開発
Project/Area Number |
21K00659
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
鈴木 彩子 玉川大学, 文学部, 教授 (00570441)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 国際語としての英語 / 異文化間シチズンシップ / 言語多様性 / マルチリンガリズム / 教育的介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語教育に異文化市民教育を統合させた国際共通語としての英語(English as a Lingua Franca、ELF)教育カリキュラムの開発を目指すものである。異文化間市民性の育成は、現代社会において異質なる多様な他者と協働するために欠かせないと言われており、異文化間市民性を異文化の他者と交流するために広く使われている英語の語学教育と組み合わせて実施していくことは、今後、高等教育が社会から期待されるところである。 このような観点から、ELF教育カリキュラム開発のために「国際語としての英語教育に異文化市民教育を統合するための理論的・実践的根拠を提示する」という目標の下、研究2年目である2022年度は主に大学生の英語観・異文化意識・英語学習観の経年変化を調査することに努めた。具体的には1年目と同じ調査を別の学生グループに実施する一方で、1年目の調査参加者である大学3年生約70名に対する留学後教育的介入でのデータ収集(22年6~7月)、17名への個人インタビュー(23年2月)を遂行した。 また、22年度は前年に収集したデータの分析・結果公表も行った。留学前教育的介入に関しては、ELFや異文化間コミュニケーションに関する講義の受講により、英語やその話者の多様性に対する理解が深まることが分かった。その一方で直接的な経験の欠如から、言語(英語)の異文化間コミュニケーションでの役割・コミュニケーションを円滑に行うために必要な方略については理解を深めることが難しく、教育現場での経験の創出の重要性を確認した。本結果については、3つの国際学会での計4回の論文発表を行うことで報告した。また、23年中に刊行される学術書に掲載の論文でも公表予定である。今後は、21・22年度に収集したデータの経年経過分析を行い、ELF教育カリキュラムに不可欠な要素を洗い出すことに努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はデータ収集を順調に進めることができた。まず、大学1年生に対するアンケート調査、大学2年生に対する留学前教育的介入および大学3年生に対する留学後教育的介入でのアンケート調査、リアクションペーパー回収を問題なく遂行できた。最も重要なデータと位置付けている学生との留学後インタビューも23年2月に17名に実施することができた。 分析に関しては、それぞれのアンケート調査の量的分析はおおむね完了している。リアクションペーパーの分析に関しては、質的研究支援ソフトウェアを利用しながらコーディングを行っている最中である。インタビューデータに関しては、実施が年度末であったため、23年度に書き起し、コード化、分析を進めていくことになる。 研究成果発表も積極的に行った。学会での論文発表は3つの国際学会(Sociolinguistic Symposium 24、13th International Conference of English as a Lingua Franca、57th RELC International Conference)で計4本行った。また、主に留学前教育的介入での量的・質的調査の結果をまとめた学術論文(タイトル:Pre-service Teachers’ Difficulty Understanding English as a Lingua Franca for Intercultural Awareness Development)が、23年に刊行される “English as an International Language Education : Critical Intercultural Literacy Perspectives” (Springer) に掲載されることが決まっている。 これらのことから順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目である2022年度は、21年度の予備調査を受けての本調査実施とし、データ収集および研究成果発表を精力的に行った。3年目となる23年度は、1・2年目に実施した調査である大学1年生に対する言語意識アンケート調査、大学2年生に対する留学前教育的介入、大学3年生に対する留学後教育的介入を継続して行う一方で、22年度に実施が出来なかった留学先現地調査も行い、留学中の学生(23年度2年生)に対し英語観・異文化間コミュニケーションに関するインタビュー調査を行いたい。時期に関しては、大学業務との兼ね合いで検討中であるが、24年2月に行うことを目指す。また、22年度のインタビュー調査参加者(23年度4年生)が調査に協力的であることから、計画当初は予定していなかったが、彼らの卒業(就業)前の24年2月に追跡インタビューを行い、大学での英語学修・留学が彼らキャリア形成に与えた影響について聞き取りを行う予定である。 データ収集と同時に、23年度はこれまでの研究成果の公表を積極的に行いたい。リアクションペーパーおよびインタビューといった質的データの整理・コード化・分析は、データ量が膨大であるためまずはここに力を注ぐ予定である。22年度に質的研究支援ソフトウェアのMAXQDAを入手することが出来たので、これを十分に活用し、データ分析の効率化を目指す。また、現時点(23年5月)で 7月に行われる20th AILA World Congressでの英語教育の倫理性に関する論文発表と、学術書2冊での論文執筆が決まっているため、これらで完成度の高い成果発表ができるよう、文献調査にも改めて力を注ぎ、完成に尽力する。そのためには、勤務校での業務掌握を緻密に行い、時間管理をしていくことが必要である。
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Causes of Carryover |
2021年度に引き続き、参加した国際学会の多くがオンライン開催となり、支出予定だった旅費が不要となった。また、留学現地調査も当初の計画では組み込んでいたが、これも所属大学での渡航制限等に伴い見送りとなり、旅費が不要となった。 2023年度は渡航制限解除により、参加を計画している学会が対面での開催であること、また、留学現地調査も実施予定であることから、未使用分はこれらに使用する計画である。
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