2022 Fiscal Year Research-status Report
日本人英語学習者における心的語彙ネットワークの深化と拡張を促す多読処理水準の解明
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21K00663
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
青谷 法子 東海学園大学, 教育学部, 教授 (00278409)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 晋也 東海学園大学, 心理学部, 教授 (70260586)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心的語彙ネットワーク / 多読処理水準 / タスク / 関与負荷 / 日本人英語学習者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多読におけるタスク起因の関与負荷(Involvement Load Hypothesis; ILH; Laufer & Hulstijn, 2001)、特にSearchとEvaluationが、EFL学習者が知覚する語彙ネットワークの変化に及ぼす影響について実験的調査を行い、検討した。95人の日本人大学生を、Search(+/-)とEvaluation(+/-)の掛け算で4つのグループに分け、すべてのグループに同じリーディング教材(15個のターゲット単語を含む306語の英文)が与えられたが、タスクは異なるものであった。評価(+)のグループには、その英文を部分的に翻訳するタスクが割り当てられた。評価(-)グループには、その内容に関する多肢選択式の問題が出された。検索(+)グループには辞書の使用が許可され、検索(-)グループには辞書の使用が許可されなかった。参加者は、タスクの1週間前、タスクの直後、タスクの3週間後の3回、対象語間の関係性を判定した。その結果、タスクを伴う多読そのものの学習効果は確認されたものの、4群間の関与度指数(involvement index)の差は対象語間の関係性には影響しないことがわかった。また、3回のテストを通して参加者の語彙ネットワークがどのように変化したかを示すため、データ可視化プラットフォームであるGephiを用いてデータを分析・可視化した。その結果、個人のネットワーク変化の質的特徴が明らかになり、集団データだけでなく個人差を調べることの重要性が示された。今回の結果は、既知語の語彙ネットワーク変化に対してタスク起因の関与負荷が働かないのか、あるいはNeed、Search、Evaluation以外の関与成分が考慮されるべきなのか、という新たな研究課題を提起した。以上の研究成果は第3回東南アジア教育学会にて発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画においては令和4年度前半までで、Involvement Load HypothesisおよびTechnique Feature Analysis (TFA; Nation & Webb, 2011)のフレームワークを援用することで、様々な既存タスクを関与負荷の程度により分類し、それらを多読活動と組み合わせながら既習語の語彙ネットワーク構造の深化・拡張についての効果測定実験を行うとし、令和4年度後半からは精緻化されたデータをもとに、語彙ネットワーク構築を促進する構成要素を組み合わせた新しいタスクのデザインを行い、効果測定実験により検証を進めるとしていた。しかし、令和3年度~4年度前半頃までの新型コロナウイルスの蔓延状況により、実験の実施方法や期間が限定されてしまったことが一因となり、十分な実験データが得られているとは言い難い状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究成果により、①既知語の語彙ネットワーク変化に対してタスク起因の関与負荷という概念自体が機能しないのかどうか、また、②機能するとしてもNeed、Search、Evaluation以外の関与成分が考慮されるべきなのかどうか、という2つの新たな研究課題が得られた。今年度はILHおよびTFAのフレームワーク自体の有効性についてさらに実験的検証を行う。そして、語彙ネットワーク構築を促進する構成要素を組み合わせた新しいタスクのデザイン構築に向けて研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
令和3年度~4年度前半頃までの新型コロナウイルスの蔓延状況により、実験の実施方法や期間が限定されてしまい、令和4年度には複数回にわたって実験を行う計画であったが、1回しか実施できなかった。来和5年度は、実験計画を見直し、昨年度未使用額を使用して 研究の遅延を取り戻す予定である。
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Research Products
(4 results)