2021 Fiscal Year Research-status Report
第二言語話者の「談話構築能力」の発達過程 ―談話機能主義の観点から―
Project/Area Number |
21K00666
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
遠山 千佳 立命館大学, 法学部, 教授 (40383400)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 談話構築能力 / 第二言語習得 / 日本語教育 / 談話機能主義 / 競合する要因 / 結束性 / 方略 / 機能談話文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、さまざまな要因が競合したり相乗効果を生じたりするなど、要因が複雑に影響し合う談話を、第二言語話者がどのように構築していくか統合的に捉え、その発達過程を明らかにすることである。 2021年度は、(1)先行研究を概観し、各研究の理論、研究方法、得られた知見を体系的に整理し、談話構築能力の発達研究に援用できる理論、研究方法をまとめること、(2)伝達相手に向けての談話(横断データ)の文字化、(3)複数名による話し合いの談話(縦断データ)およびインタビューの収集、文字化を行い、(2)と(3)の分析をする予定であった。 (1)については、日本語学習者と英語学習者を対象としたトピック表現から談話の構築について、第二言語習得研究、認知的で相互行為的な談話の研究を中心に、母語の影響、L2ストラテジーのほか、情報処理がどのように言語上に現れているかを分析方法論と併せて考察した。また、対話を質的に分析するにあたり、哲学・文学の側面からの考察を行った。これらの考察の結果、第二言語学習者の談話構築能力の発達の分析には、研究が多く行われている意味的な面の分析だけではなく、従来文法や語彙(機能語)に位置づけられてきた談話構築にかかわる表現を、機能と形式の関係から語用論的に分析する談話機能主義的なモデルが必要であること、そのための新たな分析観点が必要であることが示唆された。 実際のデータとして、(2)の音声データからは、同じ内容の書きことばによるデータと比較して、繰り返しや言い直し、フィラーなど、さまざまなストラテジーによる談話の構築が見られ、書きことばによるL2制約やストラテジーとの違いが示された。対面でのデータ収集を予定していた(3)については、新型コロナウィルス感染症拡大のため実施できず、オンラインによるデータ収集を検討したが、新たな協力者の募集は、2022年度に持ち越すこととした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
対面によるデータ収集を予定していたが、コロナウィルス感染拡大により、対象者である日本語学習者が入国できない状況であった。オンラインによるデータ収集を検討したが、本研究では、対話による談話構築を伝達相手に向けての談話構築と比較するため対面が望ましいこと、オンラインによるデータ収集の場合に時差に対応しなければならないこと、縦断的にデータを取るため、研究方法を途中で変えられないことなどから、データ収集を2022年度に持ち越さざるをえなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度から留学生が入国できるようになり、学内でも対面授業が始まったため、人を対象とした倫理審査にて承認され次第、協力者を募集し、データ収集を開始する。同時に、理論構築、横断データの分析を継続し、第二言語話者による談話構築の発達過程を、伝達場面、相互行為場面別に仮説を構築する。本研究の結果から、日本語教育の談話教育に応用できるような教材案を提示する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、予定していた対面によるデータ収集ができなかったことと、出張ができなかったことである。データ収集に必要な物品、謝礼、文字化の業務委託にかかる費用のほか、それを発表するためのデータベース作成費を次年度に繰り越す。
|