2021 Fiscal Year Research-status Report
ベトナムの技能実習生送出会社におけるオンラインによる日本語教師教育モデルの構築
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21K00674
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
西谷 まり 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 教授 (80281004)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 技能実習生 / 教師 / オンライン / 失敗から学ぶ / ベトナム / 雑談 / ライフストーリー |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナムにおける日本語学習者及びベトナム人日本語教師の多くが、技能実習生教育機関に属していることは日本国内ではあまり知られていない。帰国した元技能実習生が日本語教師として次の実習生を教えるという構図は、今後も維持される可能性が高い。実際に技能実習生の経験がある人々が送り出し側で日本語教育に携わることで、送り出し体制の改善、また、送り出し人材の質的向上に貢献しうると考えられる。 2021年度はコロナ禍の影響で、研究対象の技能実習生送出会社は技能実習生を日本に送り出すことが不可能になったため、日本語授業はほぼ休止状況であった。ベトナム人日本語教師も自宅待機が続き、新たな教師研修を行うことは難しい状況であった。 待機中のベトナム人教師を対象にオンラインを通じた教師研修を行い、副業を行いながらも日本語力を維持するための「雑談プロジェクト」を試行した。2019年度に対面で行った教師研修では「雑談ができるようになりたい」という声が多く聞かれた。実際、日々の私たちの会話を注意深く観察してみれば、特定の課題の遂行を目的としていない単なるおしゃべりが大部分を占めている。 雑談プロジェクトの途中経過を2021年8月にベトナムのホーチミン市からオンライン配信で行われた国際学会CASTEL/Jにおいて「ベトナムの技能実習生教育機関におけるオンライン日本語教師教育」というタイトルでポスター発表を行った。同学会では技能実習生送出会社勤務の元大学院ゼミ学生と「技能実習生へのオンラインによる会話授業の問題点」についてもポスター発表を行った。また、技能実習生送り出し機関の経営者等を対象にライフストーリー研究を行った。調査報告を執筆し「技能実習生送り出し機関経営者に関する一考察」を論文誌に投稿中である。2022年6月に実施される異文化間教育学会の口頭発表にもエントリーし、発表原稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度はコロナ禍の影響で、研究対象の技能実習生送出会社は技能実習生を日本に送り出すことが不可能になった。新規の実習生を募集することは難しく、そのため、日本語授業は、ほぼ休止状況であった。日本人教師の解雇が相次ぎ、ベトナム人日本語教師も自宅待機が続き、新たな教師研修を行うことは難しい状況であった。 2021年度はオンラインの集合研修は1回行うことができたのみで、研修時に希望者を募り、日本在住の日本人とのペアを作り雑談プロジェクトを実施した。オンライン集合研修を受講したベトナム人教師の中から、経験の比較的浅い3人が参加を希望したため、日本人との「雑談ペア」プロジェクトをスタートすることにした。ペアのマッチングは性別、日本人各人の外国人との接触経験などを考慮して、研究代表者が行った。雑談のツールはzoomミーティングかLINEテレビ電話を用いた。1週間に1回程度の頻度で行い、1回の雑談時間は30分程度とした。 雑談1回目終了後にベトナム人日本語教師に対して3つの質問をした。①「日本語の雑談、おしゃべりをするときに不安なことは何ですか。」②「日本語の雑談、おしゃべりがうまくいかない時、その原因は何だと思いますか。」③「間違った日本語はなおしてほしいですか」である。それらの結果を日本人ペアに伝えて改善を図った。また、プロジェクトの概要と途中経過を国際学会CASTEL/Jでポスター発表を行った。 今後は、不安と失敗に着目した指導方法を活用し、オンラインによる教師研修と「雑談ペア」プロジェクトを継続していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年3月に日本の水際対策が緩和され、4月に技能実習生の来日が再開した。現在、技能実習生送出会社は実習生の出国準備に追われており、新たな実習生の募集を再開している。日本語授業がコロナ以前のように活発に行われるのを待って、ホーチミン市のベトナム人教師に対するオンライン教師研修を実施するとともに、雑談プロジェクトの継続、技能実習生送り出し機関の責任者に対するインタビュー調査も行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究対象はベトナムの技能実習生送り出し機関であるが、コロナ禍で事業休止状態であった。渡航して調査を行うことは不可能で、オンラインの研修も実施が難しい状況であった。またホーチミン市で行われる予定であったCASTEL/J(国際学会)が全面オンラインになったため、学会発表でベトナムに渡航することができず、日本で行われた関連学会もすべて全面オンラインで実施されたため、国内出張の機会もなかった。 2022年のできるだけ早い時期にベトナムに渡航し、現地の技能実習生送り出し機関の日本語教育の状況を視察するとともに、対面で行われる日本国内の学会に出向いて情報収集と研究発表を行う予定である。また、オンライン研修の準備・実施にあたりベトナム語の通訳・翻訳をゼミのベトナム人卒業生に依頼する謝金、分析のために必要なSPSS統計パッケージ、持ち運びに便利な軽量ノートパソコンの購入などにあてる予定である。
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Research Products
(3 results)