2022 Fiscal Year Research-status Report
発音中心か文字中心か:漢字語彙を覚えるための認知的負荷軽減の方略
Project/Area Number |
21K00702
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
萩原 章子 お茶の水女子大学, 国際教育センター, 講師 (00757487)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 漢字熟語 / 非漢字圏学習者 / 構成形態素 / 同音異義語 / 同義語 |
Outline of Annual Research Achievements |
非漢字圏学習者の中には、漢字の字形の類似性や複雑さ等により、漢字熟語の学習に困難を覚える学習者が多数存在する。熟語は組み合わせにより意味が異なるため正しい文字の組み合わせとその組み合わさった文字の意味を適切に結びつけることは重要であるが、無数の漢字の組み合わせを覚えることは、非漢字圏の第二言語学習者にとっては認知的負担が大きい。 本研究では、二字熟語に含まれる構成形態素、すなわち熟語に含まれるそれぞれの漢字の読みと意味に着目させることが非漢字圏の学習者が同音異義語や同義語を含む熟語の判別に貢献すると仮定した。例えば「精神(セイシン)=spirit」という熟語を覚える際、構成形態素の漢字「精(セイ)=refined」と「神(シン)=god」を認識させたうえで、「精神(セイシン)=spirit」と覚えるよう促すことで、「セイ」を含むほかの熟語(例:性格)との区別がつきやすくなると考えた。同様に「食費」や「高価」のように、同義語を含む熟語の区別も、構成形態素のそれぞれの漢字の意味と読みを提示することにより、区別しやすくなると仮定した。この仮定を検証するために、熟語を構成形態素の意味と読みとともに提示した場合と、熟語を構成要素に分けずに「精神(セイシン)=spirit」のように提示した場合との学習効果の差を比較することにした。学習者はコンピューター画面に表示される40の熟語(うち半数は同音異義語か同義語の漢字を含む。)を学習した。40の熟語はランダムに二つの異なる学習条件に分けて提示した。 本研究ではまず、同音異義語を含む熟語(例:精神、性別)と、同義語を含む熟語(例:食費、高価)の二種の熟語の区別に差異が生じているかを検証した。検証の結果、熟語の種類による差は見られなかった。今後はさらに被検者数を増やし、学習条件による学習効果の差異を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年から2022年の期間、来日する留学生の数が少なかったため、被検者を確保するのに苦労した。
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Strategy for Future Research Activity |
被検者の数を増やすため、夏季プログラムの参加者にも募集を呼びかける。論文の先行研究ならびに実験手順の部分の執筆にとりかかる。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大の影響を受け、想定した時期より留学生の来日が遅れたことに伴い、予定より被検者の数が減った。それに伴い被検者に対する謝金の支払いが減った。R4未使用額とR5請求額は、主に今年度の被検者への謝金の支払いと海外学会参加費に使用する。
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