2021 Fiscal Year Research-status Report
第二言語学習者の様態副詞の使用についての多角的分析:英語・日本語を対象に
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21K00761
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
眞野 美穂 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (10419484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉成 祐子 岐阜大学, グローカル推進機構, 准教授 (00503898)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 移動表現 / 副詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第二言語(英語・日本語)習得における学習者の副詞の使用と、その特徴を明らかにすることである。副詞は第二言語教育では重要視されない傾向がある。しかし、言語研究においては、文中で副詞が果たす重要な機能についても研究が進みつつあり、その役割を考えると無視できないものである。また、その自由度の高さゆえに学習者の特徴が現れることが予測される。そのため、主に様態の副詞に焦点を当て、母語と学習言語の特徴を双方向に比較し、学習者言語と各言語母語話者との違いや、学習者に共通する特徴を明らかにし、その要因を解明するという研究計画を立てた。 まず、1年目である2021年度は、研究実施計画に基づき、2つのことを主に行なった。1つ目が、言語研究における副詞研究の動向、そして主に日本語と英語を対象とした第二言語習得研究における副詞研究について、これまでの研究の動向調査である。2つ目が、これまでに共同研究で行った移動表現の言語産出実験データについての、使用されている副詞に着目した再分析である。後者については、そこで見られる学習者言語のデータを分析し、その傾向を学会で発表した。副詞は修飾語であり、生じる位置にも自由度が高いことから、学習者言語の特徴が見られるだろうという予測通り、学習者言語では副詞の使用頻度および、使用される語彙の面でも、母語話者の使用と異なる傾向が観察されることがわかった。 この2つの調査は、次年度以降の実験のための準備としての位置付けを持ち、これら得られた結果に基づき、次年度以降の調査について計画をたてる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目である2021年度は、先に述べたように、当初の計画通り、研究を進める事ができた。特に実施内容の2つ目である移動表現の言語算出実験データについては、その分析結果を前倒しし、3月に社会言語科学会で発表する事ができた。 調査の結果分かったこととしては2点ある。1点目は、日英語母語話者間で副詞的要素の使用に差異が観察されることである。日本語母語話者は副詞的要素の使用、種類共に少なく、様態を表すものがほとんどであったのに対し、英語母語話者は副詞的要素の使用が多く、その種類も多様であった。2点目は、学習者間の差異である。日本語学習者は副詞的要素の使用が比較的多く、様態を表す副詞的要素だけでなく、程度や時間の副詞なども使用しており、母語である英語の影響が観察された。一方、英語学習者の副詞的要素使用は非常に少なく、経路や場所を表すものなど、移動事象の中心的な意味概念に限定されており、母語である日本語との共通点が観察された。 これらの特徴を踏まえ、2022年度には学習者コーパスを用いて、日英語学習者の副詞的要素の使用について、より詳しく調べていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度の言語産出実験データ分析の結果から、調査すべき対象となる副詞や観点を選別し、学習者コーパスを利用した調査を計画し、実施する。そして、その結果について、学会で発表を行う予定である。ただし、既に分析を行なった言語産出実験データからは、特に学習者言語では、限られた副詞的要素の使用しか観察されないことがわかったため、学習者コーパスを利用した調査では、より多くの副詞的要素が得られるよう、工夫する必要がある。それによって、学習者の副詞的要素使用の傾向がより見えてくるものと考える。 その上で、これらの調査では明らかにできなかった側面に焦点を当て、学習者の副詞使用の特徴を明らかにするため、映像を用いた言語産出実験を計画したい。ただし、新型コロナ感染症の状況によっては、言語産出実験の形態、および、その実施場所などの再検討が必要になることが予測される。2022年度の状況を見て、2023年度にどのような調査が実施可能かを検討し、対応策を考えていく予定である。
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Research Products
(2 results)