2022 Fiscal Year Research-status Report
フランス語学習者コミュニティの形成:オンライン学習支援システム開発とその効果検証
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21K00769
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
澁谷 与文 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 講師(非常勤) (70894484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 梓 近畿大学, 法学部, 准教授 (90713636)
野澤 督 大東文化大学, 外国語学部, 講師 (50773438)
松井 真之介 宮崎大学, 多言語多文化教育研究センター, 准教授 (70533462)
松川 雄哉 早稲田大学, 商学学術院, 専任講師 (50803871)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オンライン学習支援 / 学習コミュニティ / フランス語教育学 / 国際文化学 / フランス語圏文化 / サードプレイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトはフランス語・フランス文化に関するサードプレイス的コミュニティの構築を目的とし、2年目となる2022年度は、17回のイベントプログラム(21年度7回)を実施した。これに加え、2件のインタビュー調査、1件の論考執筆、1件の研究報告を行った。この研究報告に関わる論考は23年度の成果となる。 今年度は、7回のフランス語学習のアトリエ、6回のフランス文化のワークショップ、1回のフランス文化をテーマとした学生発表会、1回の研究授業を開催した。アトリエではフランス語検定、発音、接頭辞・接尾辞、アニメの名台詞、フランス菓子の表現、映画の表現、ケベックで用いられる表現などをテーマとして取りあげた。ワークショップではペタンク、ペタンク体験報告、南仏文化、ペタンク指導、歌、パティシエ修行などをテーマとして設定した。学生発表はオペラ、フランスのファッションがテーマとなった。 しかしながら、6月と9月に2度、参加者が集まらずイベントプログラムを実施できなかったことがあった。これは、本研究の目標達成に影響を及ぼしかねない事態であったため、会議を通じて問題点を特定し、多くの運営上の修正を行った。具体的には、募集チラシの作成、LINE公式アカウント、LINEオープンチャットの開設や、メールマガジンの発行、ホームページの利用方法の見直しなどを通じ、宣伝活動を整理・拡充した。また、対面イベントを軸としたコンテンツの再構成を行い、特に、ワークショップというコンテンツの枠を対面イベントと関連する内容に特化させた。 この結果、2度のインタビュー調査、ポートフォリオの運用を通じ、学習者の変容と「フランス語大学」というシステムの有用性を立証するための十分なデータが蓄積できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
22年度の目標は、小規模な運営の中での調査と運営改善であった。研究実施計画に述べた目標は以下の5点である。①研究授業と対面イベント「大学祭」の開催、②ポートフォリオの分析とインタビュー・アンケート調査、③収集データの質的分析による学習者の変容調査と学習支援システムの有用性の検証、④運営・コンテンツ面の改善に向けた検討、⑤成果報告であった。結論から述べれば、5点とも達成したと言える。 第一に、対面イベント「大学祭」と研究授業につき、11月12・13日に3件のワークショップと1件の研究授業を行った。この研究授業は、4年目の課題を見越して、民間語学学校において実施した。 第二に、ポートフォリオについて、ふりかえり日誌という名目で、各イベント後に記載してもらう形で運用を開始した。ただし、活動の性質上、各モニターの自由意志でポートフォリオを記載して欲しいことから、全モニターに対して記載を強制はしていない。こうした中、数名のモニターが定期的にこれに記載しており、一定の成果があがっている。次に、インタビュー調査を22年11月と23年3-4月に2度実施した。初回調査は13名のモニターに対し、2回目調査も13名のモニターに対しインタビューを行った。 第三に、収集データはクローズドネットワーク化したクラウドドライブに整理して格納済みである。23年5月のフランス語教育学会における口頭発表と、その後の論文執筆に向けてデータの検証を進めている。 第四に、運営・コンテンツ面につき、17件のイベントプログラムの実施を経て、代表者・分担者で12回の会議を行い、この中で問題点を議論し、次年度プログラムについての方針を作成した。 第五に、成果報告につき、21年度に引き続き、関西フランス語研究会にて研究報告を行った。また、21年度の報告に関わる論考を執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は研究協力者の学生を交えたコミュニティ規模の拡大を目指す。前年度のイベント参加モニター数は3名から14名であり、17回のイベントに平均9名の参加者数を記録した。定期的に関与してくれるモニター数は20名を超え、年度目標を達成することができた。初年度のモニター数に関しては、概算しか記録していないが、平均参加モニター数は前年度に比べ倍増したと考えられる。また、23年度については定期的なイベント数が増える見込みがある。 前年度に定着したフランス語アトリエ、21年度以来のフランス語文化ワークショップと学生発表会を継続する。また、待望されていたボトムアップ型のフランス語学習プログラムであるフランス語検定学習サークルを開始する。この新プログラムの成立はコミュニティが軌道に乗っていることを示す証拠と言えるし、同様の新しいプログラムの開発にも期待が寄せられる。さらに、対面イベント「大学祭」の企画も継続する。これらの運営の過程でデータを収集し、質的分析を行うことが計画されている。 前年度は2度のインタビュー調査を実施し、その結果を元に、23年度に行う研究報告を準備を進めている。前年度の調査は、今後の予備調査の位置づけであり、23年度5月には、グラノヴェター(1973)、オルデンバーグ(1989)らの議論を踏まえた、フランス語大学のコミュニティとしての特質に関する調査報告を行う予定である。 最終年度に向けては、規模の拡大、新たなコンテンツ、対面イベントという新要素・不確定要素との対話を通じて、研究者間の議論の質を高めつつ、柔軟な運営改善、研究調査、発表準備を継続していく。
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Causes of Carryover |
2022年度の大学の授業の対面回帰が、オンラインコミュニティに対する逆風となって、本研究の目標達成に影響を及ぼしかねない事態が生じた。そこで、対面イベントを積極的な投資の機会として捉え、当初より予定していた規模を拡大した。このため、予算前倒し請求を行い30万円を支出した。 また、研究分担者の一人である松川雄哉先生は、別の公務との兼合いから本科研への参加が難しく、初年度から23年度まで3年間の研究不参加を協議の元に確定した。したがって、3年分の予算の返金を受ける予定である。 支出計画は、上記の事情を踏まえれば、順調に推移している。ただし、次年度使用額が生じている理由としては、まず、上述した返金がおよそ半分を占めていることが挙げられる。返金を受けた分については、研究代表者が、23年度・24年度の対面イベント「大学祭」の計画のために支出する。 次年度使用額の残り半分は、他の研究分担者3名の支出計画において、講演者の謝金を順番に支出する計画が3年目より実行される運びとなっていることから、研究分担者が積極的な支出を行いにくい状況にあったことが挙げられる。この点についても協議を行い、次年度からは改善が見込まれる。
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Remarks |
LINE公式アカウント(HPから登録可)、メールマガジン(HPから登録可)、LINEオープンチャット(数種類)
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