2021 Fiscal Year Research-status Report
Research for the Application of Oral Storytelling Tradition of the Tsugaru Region to University-level English and Historical Cultures Education
Project/Area Number |
21K00782
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
多田 恵実 弘前大学, 教育推進機構, 准教授 (60381290)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Solomon Joshua 弘前大学, 教育推進機構, 講師 (60816007)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 英語教育 / 伝承物語 / 口承文学 / 内容言語統合型学習 / 地方文化 / 言語間翻訳 / 言語内翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、青森県津軽地方に残る昔語りの物語の数々を地方語(津軽弁)で語る語り部達の協力を得て、彼らの口承物語を伝える活動からその物語(「昔コ」と呼ばれる)を採取し、実際の語りの録音とともに、英訳したうえ解説を加え、語学習得用の教科書を作成する。 本研究は物語の英訳と、その地域文学的意義と文化的な背景等の注釈を分析しながら、言語学習のための方法を探る目的で、学習者が文化的に親しみ易い内容で学ぶことで語学の習得がいかに容易になるかどうかを検証し、昔話を言語教育に効率的に活用できるよう、実証的な実験を遂行していく。その結果を日本人学生ならびに海外からの学習者の英語学習、および津軽地方の地域志向学習推進の一環として活用していく。 今、記録しなければ消えてしまう土地に根ざす日本の地方語、地方文化を広く一般に、そして世界に発信していくと同時に、1)具体的にこの口承文学を効果的に語学学習に使用することが可能か、2)文化的に親和性のある教材を用いることは学習者の学習内容に効果を上げることができるか、3)異なる言語同士の翻訳(言語間翻訳)と同一言語内での言い換え、この場合、地方語と共通語間での翻訳(言語内翻訳)の教材としての効果、そしてまた、4)学習者の文学的な言語に対する意識や定着力、についての検証を行う。具体的に、これらの効果について、学生インタビューおよびアンケート調査を通して質的に測定する。その結果を英語教育および歴史文化教育に活用し、教科書出版に応用するための具体的な実験を行っていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ感染症対策により制約が多い時ではあったが、これまで既に多田とソロモンにより、以下が実施されている。1)語り部に実際に語りを実演してもらい、その音声を収録し、2)地方語(津軽弁)での語りの書き起こし原稿を収集、3)聞き取りをした話の内容の英語訳の草稿30篇、4)語り部たちの語りの活動についての聞き取り調査を行った。 さらに、4)文化的に親和性のある教材(culturally familiar materials)の効果についての実験を各英語クラスにおいて多田とソロモンが令和3年度前期、後期に行っている。 そのほかには広く一般の意見を聴取するため、5)語り部達の語りの演技と、学生による英訳された物語の語りとコラボレーション企画し、オンラインで地域住民が聴衆として参加できるワークショップを地域貢献として行い、その反応を具体的に調査し、6)本学の海外協定校のひとつである台湾協定校向け短期オンライン交流プログラムにて日本語教育の一環として同内容を講義した。 研究発表は、多田・ソロモンが令和3年度に大学英語教育学会(JACET)、全国語学教育学会(JALT)で行い各Proceedingsに掲載され、JALTの地方研究会、Tsugaru Ideas for Language Education Seminarでも発表を行った。また、Asymptoteという翻訳専門ジャーナルに「Translating Past Into Future: Joshua Lee Solomon and Megumi Tada on Dialect Storytelling in Northeastern Japan」というインタビューを投稿した。ソロモンは学会ワークショップ(九州大学主催)にて3つの研究発表をし、また多田、ソロモンそれぞれが『弘前大学国語国文学会第41号』『同42号』に、投稿し、掲載された。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染症対策下の制約はしばらく続くことと予測するが、その対策に配慮しながら、2022年で行った学習者との実験を継続的に開発し、その結果を分析する(多田・ソロモン)。コロナ禍の中、当初予定していた海外での研究発表はできない可能性があるが、オンラインや国内での研究発表は続けていく。「文化的に親和性のある教材」の効率性についての上記実験の結果を逐次、研究発表を行い、論文にまとめて出版し(多田・ソロモン)、また各研究者がその結果をもとに独自の研究活動を並行して続ける。2023年3月までには、「昔コ」の英訳の原稿を統一した語調に編集し、完成させ(ソロモン)、テキストのローマ字での音声としてのアルファベット化を行い、教科書の原稿を準備する。教科書の執筆準備として、津軽弁の解釈に加え、昔話の解説として、民族的・歴史的・文学的な意味づけを付す(多田・ソロモン)。2024年3月までに教科書の原稿を完成させる。
|
Causes of Carryover |
授業クラスで行われた実験や、一般市民への公開講座で得られた知見の研究成果を発表するための学会発表が、コロナ感染症対策のため、1)すべてオンラインで行われ、旅費が生じなかったこと、特に2)海外の学会発表に出かける機会がなかったこと、また、3)学生と語り部のコラボレーション企画として行った社会貢献講座は、コロナ感染症対策を鑑みて、実際の集会を避けオンラインで行ったこと、が考えられる。今年度の計画として、1)実験においては、学習者に英語学習において、文化的に馴染みのある文学作品をどのように効果的に使用することができるか、そして、文化的に親しみのある言語学習教材やinterlingual(言語間)翻訳とintralingual(言語内)翻訳と、学生のモチベーション、感情移入、知識保持、英語理解度との関係を検証する予定で、その被験者を大学の一年生の中から募る。実働時間に従って謝礼を支払うので、その謝金に使用し、また、2)公開講座を開いて市民の翻訳テキストの使用感についての意見を広く募り分析し、研究費を公開講座開催のための費用にあてる。また、3)今後の感染対策状況にもよるが、学会発表を実際に対面で行われるものに参加し、参加費用と旅費として研究費を使用し、海外からの学会参加者との意見交換を深め、国際的な視野を含めた知見を組み込んでいく。
|
Remarks |
Asymptoteという翻訳専門ジャーナルに「Translating Past Into Future: Joshua Lee Solomon and Megumi Tada on Dialect Storytelling in Northeastern Japan」というインタビューを投稿した。
|
Research Products
(6 results)