2023 Fiscal Year Research-status Report
『全国学力・学習状況調査』データ解析に基づく中学校英語教育改善に関する研究
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21K00784
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
斉田 智里 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (50400594)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 英語教育 / 学力調査 / 無解答率 / 英語力 / 質問紙調査 / 書くこと / 話すこと |
Outline of Annual Research Achievements |
①英語教育では,自分の考えや意見を英語で表現する力の育成が求められる。パフォーマンステストに対して,解答した結果の誤答ではなく,そもそも解答すらしない無解答という状況は,教科の特性上問題ではないかという課題認識の下,平成31年度全国学力・学習状況調査中学校英語のデータ解析により,無解答率の原因解明に関する研究を行った。問題の困難度と無解答率との間には,強い相関があるが,問題の識別力と無解答率との間にはそれほど強い関係はない。問題内容と問題設定が無解答率に大きく影響をしていることがわかった。選択式問題(「聞くこと」「読むこと」)より,短答式・記述式問題(「書くこと」「話すこと」)の無解答率が20%程度と高い。英語力層によって,無解答の傾向が異なる。高学力層では「書くこと」より「話すこと」の問題の無解答率が高く,低学力層では「話すこと」より「書くこと」の問題の無解答率が高い。領域統合問題(聞いて書く,読んで書く,聞いて話す)の無解答率がどの学力層でも高く,特に低学力層では6割程度と高い。日本語の指示の有無で無解答率が大きく異なる。質問紙調査結果から,英語問題の無解答率の高い生徒は,英語学習意欲や英語学習自体に課題があること,正確な英語運用を求める問題の無解答者は英語学習への否定感情が強いこと,英語で授業を行う割合が高く,英語で発展的な活動ができる学校ほど無解答率が低い傾向が見られた。 ②英語力に関連する学習要因・指導要因を特定する研究を平成31年度調査結果を用いて行った。英語力を最もよく予測する英語授業の内容は,英語を読んで概要や要点を捉える活動,自分の考えや気持ちを英語で書く活動,まとまった内容を英語で発表する活動の順であった。英語学習に関する質問では,英語の授業が分かること,最後まで問題を解こうと努力する態度,英語の勉強が好きであることの順で英語力をよく予測していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果を論文としてまとめることができ,査読付き論文2本が学会誌に掲載された。関連する内容で,査読付き論文2本,査読なし論文1本,解説記事2本が出版された。学会発表も関連する内容で3件報告できた。
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Strategy for Future Research Activity |
H31全国学力学習状況調査中学校英語データを用いて,英語力の予測要因を特定する研究については,学会発表まで終わっているので,論文としてまとめて投稿する。小中連携の取組が英語力に及ぼす効果についても研究を進める。令和5年度全国学力・学習状況調査で2回目の中学校英語調査が実施された。2つの調査結果の比較分析を行い,改善したことと改善していないことは何か,今後の英語教育の展望について,引き続きデータに基づいて解明を試みる。
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Causes of Carryover |
旅費と人件費の使用が予定より少なかった。2024年度まで事業の延長を行い,①全国英語教育学会,日本言語テスト学会,関東甲信越英語教育学会,小学校英語教育学会で学会発表の予定である。また,アメリカカリフォルニアで2025年3月に開催される国際学会TESOLでの発表を申込む予定である。2024年8月にマレーシアクアラルンプールで開催される国際学会AILAにも論題が採択されており,どちらかに参加の予定である。②人件費として,非常勤教員を一名雇用し,継続的な研究補助業務をしてもらうことで,効率的な研究活動を実現する予定である。
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