2021 Fiscal Year Research-status Report
中・上級英語学習者でも「治らない」エラーに関する言語学的要因分析と対応策
Project/Area Number |
21K00802
|
Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
西谷 工平 就実大学, 人文科学部, 准教授 (80633627)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中崎 崇 就実大学, 人文科学部, 教授 (60554863)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 第二言語習得 / 日本語を母語とする中・上級英語学習者 / 複数形態素“-s” / エラー / 英語学 / 日本語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、日本語を母語とする中・上級英語学習者でも「治らない」エラーのひとつのケーススタディーとして、西谷・中﨑・ダンテ(2017)で分析した複数形態素“-s”の欠落を再検討した。西谷・中﨑・ダンテ(2017)で分析対象とした英語学習者の習熟度は初級~中級にやや偏っており、“-s”の欠落は単なる学習時間の不足に起因する可能性があった。そこで、西谷・中﨑(2019)ではデータを中・上級英語学習者に絞り込み、さらに西谷・中﨑(2022)では中・上級英語学習者のデータを追加することで、“-s”の欠落が中・上級英語学習者であっても「治らない」のかを分析した。結果として、①中・上級英語学習者であっても“-s”の欠落が少なからず認められること、②西谷・中﨑・ダンテ(2017)が指摘した名詞の数への関心度に関する日英の差異に加えて、総称性・不定の複数・複数マーカーの共起も“-s”の欠落を誘発することを明らかにした。これは、学習者の無意識的な母語知識が学習者自身による外国語のエラーへの「気づき」を困難にしていることを裏付けるひとつの事例である。このようなエラーへの対応策として、西谷・中﨑(2022)は、①当該エラーの要因の複雑さを鑑み、万人向けの対応策ではなく、中・上級英語学習者に特化した対応策を講じる必要があること、②具体的には、複数性の言語化に関する日英の差異を明示的に教示すること、を提案した。以上の研究成果は、①研究発表「中・上級英語学習者の形態素エラー―複数形態素“-s”再訪」(令和3年JACET中国・四国支部春季研究大会)および②論文「日本語を母語とする中・上級英語学習者の複数形態素“-s”の欠落―総称・不定の複数・複数マーカーの日英対照―」『大学英語教育学会中国・四国支部研究紀要』第19号(2022年)で発表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の研究成果は、研究発表1回と査読付き論文1本であり、概ね予定通りである。当初は各年度に複数のケーススタディーを走らせることも検討していた。しかし、2021年度で研究した複数形態素“-s”の欠落がそうであるように、無意識的な母語知識と外国語のエラーとの相関性は言語学的観点からすると非常に複雑であり、慎重な取り扱いを要すること、また、当該エラーに対する対応策(指導法)を考案するリソースも確保しなければならないことを考慮に入れると、各年度に1ケースというペースが妥当かつ安全だと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、日本語を母語とする中・上級英語学習者に根強く残るエラーについてのケーススタディーを継続しつつ、そのエラーに対する対応策(指導法)に相応のウェイトを置く予定である。とくに近年、急速に精度を高め一般に広く普及しつつある機械翻訳を指導のひとつの手立てとして視野に入れ、中・上級英語学習者であっても扱いの難しいエラーが機械翻訳によってどの程度まで解消されるのか、解消されない場合はどのような指導が必要になるのかを研究する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、2021年度の研究大会がオンライン開催に変更され、旅費が発生しなかったためである。2022年度の研究大会が対面となるかオンラインとなるかは新型コロナウイルス感染症の感染状況次第であり、旅費の必要性もそれに左右される。もし旅費が発生しない場合は、研究書等の購入に充てたいと考えている。
|
Research Products
(2 results)